横浜の交通事故に強い弁護士《クロノス総合法律事務所》|交通事故の慰謝料・賠償・後遺障害の相談
《神奈川県弁護士会所属》
横浜市中区山下町74-1 大和地所ビル1108
交通事故で脳挫傷と診断されたら高次脳機能障害を専門的に診ている病院で後遺障害診断書を作成してもらおう!
高次脳機能障害は見落とされやすい!
高次脳機能障害とは、交通事故などによって頭部を受傷し脳に損傷を受けたことによって認知機能や人格に生じる障害のことをいいます。
高次脳機能障害の代表的な症状として注意障害、記憶障害、遂行機能障害、人格変化などがあげられます。
①注意障害
注意障害とは、会話や動作が散漫になったり、思考力、判断力、集中力が低下した状態、また、それによって同時に2つのことができなくなってしまうような状態を言います。
②記憶障害
記憶障害とは、新しいことを記憶すること、記憶を保持すること、記憶を思い出すことのいずれかに障害がある状態を言います。新しいことを記憶できない場合を前向性健忘と言ったりします。また、事故前に覚えていた記憶を思い出せない場合を逆行性健忘と言ったりします。
③遂行機能障害
遂行機能障害とは、目的に向かって計画を立てて計画通りに実行する能力が低下した状態を言います。
④人格変化
人格変化とは、ちょっとしたことで怒るようになり感情のコントロールができなくなったり、事故前は普通の社会生活を送っていた成人が、事故後、人に甘えて子供っぽくなったりといった感情や人格面で変化が生じることを言います。
注意障害、記憶障害、遂行機能障害、人格変化といった症状は、事故前の状態を知らない人からすると、もともとそういった傾向のある人だと思われてしまい、高次脳機能障害と気づかれないことがよくあります。
被害者のことをよく知っている人でも、気づかないことがあるので、第三者が気づかないのも仕方ないのかもしれませんが、実は、医師でも高次脳機能障害を発症していると気づかず見落とすことがあります。
そのため、高次脳機能障害は見落とされやすい後遺障害だといわれています。
自賠責でも高次脳機能障害が見落とされやすい後遺障害であることを前提として審査対象とする事案の基準を定めている
実は、後遺障害を認定する自賠責の損害保険料率算出機構も高次脳機能障害が見落とされやすい後遺障害であることを前提として、高次脳機能障害の審査対象とする事案の基準を定めています。
A.後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる場合(高次脳機能障害や脳の器質的損傷の診断名またはMTBIや軽度外傷性脳損傷の診断名が記載されている等)
全件高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険(共済)審査会において審査を行う。
B.後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められない場合(高次脳機能障害や脳の器質的損傷の診断名またはMTBIや軽度外傷性脳損傷の診断名が記載されていない等)
以下の①~⑤の条件のいずれかに該当する事案(上記A.に該当する事案は除く)は、高次脳機能障害(または脳の器質的損傷)の診断が行われていないとしても、見落とされている可能性が高いため、慎重に調査を行う。
具体的には、原則として被害者本人および家族に対して、脳外傷による高次脳機能障害の症状が残存しているか否かの確認を行い、その結果、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められる場合には、高次脳機能障害に関する調査を実施の上、自賠責保険(共済)審査会において審査を行う。
①初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、MTBI、軽度外傷性脳損傷等の診断がなされている症例
②初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、認知・行動・情緒障害を示唆する具体的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経系統の障害が認められる症例
③経過の診断書において、初診時の頭部画像所見として頭蓋内病変が記述されている症例
④初診時に頭部外傷の診断があり、初診病院の経過の診断書において、当初の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3~2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いていることが確認できる症例
⑤その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例
(2018年5月31日「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」抜粋)
長くて分かりにくいですが、Aの内容は、後遺障害診断書に高次脳機能障害の症状が記載されていたり、高次脳機能障害、脳外傷等と記載されている場合には、すべての事案が高次脳機能障害の審査対象になるということを言っています。
一方、Bの内容は、後遺障害診断書に高次脳機能障害の症状、高次脳機能障害、脳外傷等が記載されていない場合に、①から⑤の条件に該当するときには、高次脳機能障害の審査対象になるということを言っています。
このことから分かるのが、交通事故の被害者が高次脳機能障害の可能性があるのに、医師が作成する後遺障害診断書に、高次脳機能障害の症状も脳外傷があるということも記載されないことがあるということです。
普通に考えて、交通事故で高次脳機能障害になってしまうほどの怪我を負って、後遺障害診断書に高次脳機能障害の症状も脳外傷も記載されないということがあるの?って思ってしまいますが、実際に私も経験したことがあります。
それだけ高次脳機能障害は見落とされやすい後遺障害だということなんです。
高次脳機能障害が見落とされていた事例
当事務所が実際に経験した高次脳機能障害が見落とされていた事例を紹介します。
被害者は、交通事故によって脳挫傷、急性硬膜下血腫と診断されました。
ただし、急性硬膜下血腫については、血腫が少量であったため開頭血腫除去術は実施されておらず、吸収されて消失しました。
開頭血腫除去術が実施されている事案では、高次脳機能障害を発症することが多いですが、一方、開頭血腫除去術が実施されていない事案では、脳挫傷の程度が軽く、頭蓋内圧の上昇など頭蓋内の環境変化で生じる二次性脳損傷も発生しにくいためか、高次脳機能障害を発症しないケースも多々あります。
そのため、医師は、患者に軽度の高次脳機能障害の症状があっても、それを見落としてしまうことがあるようです。
当事務所が担当した事例も、開頭血種除去術は実施されていませんでした。
しかし、被害者自身は、記憶障害を感じていたのですが、医師が問題ないと被害者に伝えていたため、被害者は、記憶障害が自分の勘違いと思ってしまい、そのまま症状固定としてしまいました。
その医師が作成した後遺障害診断書には高次脳機能障害という診断名はなく、高次脳機能障害の症状も記載されていませんでした。
その後、当事務所に相談に来たのですが、軽度の記憶障害があって、仕事にも支障が生じているという話でしたので、念のために高次脳機能障害を専門的に診ている病院を案内して、通院してもらうことにしました。
高次脳機能障害を専門的に診ている病院では、初回の診断で高次脳機能障害の可能性があるという見立てをして、その後、何度か検査を実施して、最終的には高次脳機能障害という診断をしました。
もちろん、後遺障害診断書は、あらためて高次脳機能障害を専門的に診ている病院で作成してもらい、自賠責では高次脳機能障害で7級が認定されました。
高次脳機能障害を専門的に診ている病院で後遺障害診断書を作成してもらおう!
脳挫傷の場合、高次脳機能障害でなくても脳挫傷痕で12級の後遺障害が認定されますが、高次脳機能障害の場合、後遺障害等級は最低でも9級になりますので、やはり、見落とされないように高次脳機能障害を専門的に診ている病院を受診して、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
局所性の脳損傷である脳挫傷と違いびまん性軸索損傷の場合、高次脳機能障害を発症しているケースでは、脳室拡大・脳萎縮という画像所見があることが多いので、高次脳機能障害が見落とされるケースは、脳挫傷の場合と比べて少ないように思います。
しかし、医師によっては脳室拡大・脳萎縮の画像所見を見落とすこともあります。そのため、びまん性軸索損傷の場合でも、高次脳機能障害を専門的に診ている病院を受診して、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
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交通事故でフロントガラスが顔面に突き刺さった影響で女優を引退
先日,山の日で休日だったので久々にゴールデンタイムにテレビを見ていたところ,TBSの「爆報!THEフライデー」という番組で,岡寛恵さんという女優さんのことが取り上げられていました。
「爆報!THEフライデー」によると,女優の岡寛恵さんは,14歳の時に大林宣彦監督の「時をかける少女」で主演の原田知世さんの妹役を演じるなど,若いうちから女優として実績を残された方だったようです。
ところが,19歳の時に,対向車線を走っていた自動車が,岡寛恵さんが乗っていた自動車に衝突するという交通事故に遭い,その際に,岡寛恵さんは,フロントガラスに顔面を強打し,割れたフロントガラスが顔面に突き刺さり,顔面に無数の傷跡が残る怪我を負ったそうです。顔面の傷跡は20か所以上で,治療をしても傷跡が残ってしまったために,女優生命を絶たれ,19歳で女優を引退しなければならなくなったそうです。
ただ,現在は,顔面形成外科手術を受けて傷跡はほとんど消えて,女優や声優さんとして復帰されているそうです。
女優の外貌醜状の後遺障害
女優さんにとって顔に傷を負うというのは,職業的には致命傷といっていいと思います。ところが,自賠責では,職業的な違いを考慮することなく,決まった条件によって後遺障害の認定をすることになりますので,女優さんだからといって外貌醜状の後遺障害で1級になるというようなことはありません。
女優さんであっても,醜状の程度によって以下の7級から12級の後遺障害が認定されることになります。
後遺障害等級 | 障害の程度 | 醜状の程度 |
---|---|---|
後遺障害7級 | 外貌に著しい醜状を残すもの | ①頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含まない。)以上の瘢痕又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損 ②顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没 ③頚部にあっては、てのひら大以上の瘢痕 ①から③が人目につく程度以上のもの |
後遺障害9級 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの | 顔面部の長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの |
後遺障害12級 | 外貌に醜状を残すもの | ①頭部にあっては、鶏卵大以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損 ②顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線条痕 ③頚部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕 |
岡寛恵さんの場合,顔面の傷跡が20か所以上ということだったので,この場合には,おそらく7級の後遺障害が認定されることになると思います。
女優の外貌醜状の逸失利益
外貌醜状は,後遺障害による逸失利益が認められるかということが問題となります。
外貌に醜状が残っても,労働能力が低下したわけではないから,後遺障害による逸失利益は認められないのではないかという問題意識です。
しかし,顔面に傷跡が残れば人前に出るような仕事や人と対面するような仕事の場合,労働能力に影響があることは間違いありません。ましてや,岡寛恵さんの場合は女優としての仕事ができなくなってしまったのですから外貌醜状による逸失利益が認められることは間違いありません。
後遺障害による逸失利益は
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
という計算式で計算をすることになるので,以下では,岡寛恵さんの交通事故で,労働能力喪失率,基礎収入,労働能力喪失期間がどのように判断されることになるのか考えてみたいと思います。
労働能力喪失率
通常,労働能力喪失率は,後遺障害等級ごとに決まっていて,例えば,7級の後遺障害であれば56%と定められています。
ところが,外貌醜状の後遺障害の場合,先ほど説明したように労働能力が低下したかどうかが問題になるので,逸失利益が認められる場合でも,後遺障害等級ごとに定められている通常の労働能力喪失率よりも下げられることが多くあります。
では,女優さんに外貌醜状が残った場合も同じように労働能力喪失率は下げられてしまうのでしょうか?
岡寛恵さんの場合,実際に女優として活躍し実績があったので,この事実はかなり重視する必要があると思います。
おそらく,実績のない女優さんの場合には,労働能力喪失期間のうち最初の10年くらいを等級どおりの労働能力喪失率として,それ以降を一定程度下げた労働能力喪失率を認定する可能性が高いと思います。
しかし,実績のある女優さんの場合,外貌醜状がなければ長い期間女優として活躍した可能性が高いので,労働能力の喪失の程度は大きいと評価されるように思います。
そうすると,岡寛恵さんの場合は,外貌醜状の後遺障害であったとしても,後遺障害等級どおりの労働能力喪失率が認められる可能性が高いのではないかと思います。
基礎収入
基礎収入は,基本的には事故前年の年収を基準とします。被害者の年齢が30歳未満の場合には,賃金センサスの平均賃金を基礎収入とすることもあります。
当時の19歳の女優さんの年収がどの程度の金額なのかは知りませんが,おそらく,高卒で一般的な仕事に就いた女性と比べると高い収入を得ていた可能性が高いと思います。
そうすると,基本的には,賃金センサスを使わずに事故前年の年収を基礎収入とする可能性が高いと思います。
ただし,女優さんのように毎年仕事によって収入が変わる仕事は,保険会社側から,就労可能年齢の67歳まで同じ年収が続く可能性は低いと反論されることがあります。
賃金センサスの平均賃金よりもはるかに高額な年収だった場合には,このような反論が認められる可能性もありますが,賃金センサスの平均賃金よりも100万円から200万円高い程度であれば,おそらく事故前年の年収を基礎収入とすることになるのではないかと思います。
可能性としては低いように思いますが,もし,事故前年の年収が賃金センサスの平均賃金よりも低い場合には,19歳と若年者であることから,賃金センサスの平均賃金が基礎収入となります。
労働能力喪失期間
通常,労働能力喪失期間は,症状固定時の年齢から67歳までの期間とします。仮に,症状固定時の年齢が事故から1年後の20歳であったのであれば,労働能力喪失期間は47年となります。
ところが,外貌醜状の後遺障害の場合,労働能力喪失率を下げ,さらに,労働能力喪失期間まで短くするという判断をされることがあります。
特に,主婦に外貌醜状の後遺障害が残ったようなケースでは,労働能力喪失率,労働能力喪失期間ともに通常のケースを下回るような内容になることが多くあります。
女優さんの場合,ほかの仕事に比べて,外貌醜状による労働能力喪失の程度が大きいことは間違いありませんし,定年のない仕事ですので,実績のある女優さんであれば,長い期間女優として仕事をすることになると思います。このような事情を考慮すれば,外貌醜状であっても,女優さんの場合には労働能力喪失期間は,就労可能年齢の67歳まで認められる可能性が高いのではないかと思います。
まとめ
外貌醜状の場合,後遺障害による逸失利益は必ずといっていいくらい争点になります。仕事が女優さんであれば尚更だと思います。
外貌醜状で後遺障害による逸失利益が認められるためには,外貌醜状により仕事上どのような影響が出る可能性があるのかということを詳しく主張する必要があります。仕事上どのような影響が出るかをしっかりと主張できなければ,外貌醜状の後遺障害による逸失利益は否定されてしまいますので,外貌醜状で保険会社から後遺障害による逸失利益を否定されている場合には,弁護士に相談することをお勧めします。
警察や保険会社から物損事故で処理したいと言われても断ろう!
交通事故に遭うと交通事故証明書が発行されます。
この交通事故証明書には,「人身事故」もしくは「物損事故」と事故の種類が記載されるのですが,被害者が事故の怪我で通院をして治療を受けているにもかかわらず,交通事故証明書に「物損事故」と記載されているケースがあります。
通常は,医師が作成した診断書を警察に提出すれば,人身事故として処理されるのですが,警察や保険会社が物損事故で処理したいと言って物損事故扱いになってしまうことがあるようです。
交通事故の被害者から相談を受けると,必ず交通事故証明書で人身事故になっているかを確認するのですが,物損事故になっている場合には,被害者になぜ人身事故扱いにしなかったのか確認をします。
そうすると,相談者は,「警察から物損事故で処理したいと言われた」,もしくは,「保険会社の担当者から治療費は支払うから物損事故として処理してほしいと頼まれた」と回答します。
被害者は,警察や保険会社の担当者から物損事故にして欲しいと頼まれて善意で人身事故にせず物損事故にしているのですが,警察や保険会社の担当者は被害者のことは一切考えず自分たちのことしか考えずに物損事故にして欲しいとと言っているので注意が必要です。
人身事故の場合,警察は,事故現場などの実況見分(いわゆる現場検証)をして,その結果を記録した実況見分調書を作成します。
また,加害者と被害者から事情を聴取して,それぞれの供述調書を作成します。
実況見分調書や供述調書など交通事故の証拠がそろったら,事件を検察官に送致して,交通事故の加害者の刑事処分を検察官に図ることになります。
一方,物損事故の場合,警察は実況見分調書を作る必要も,供述調書を作る必要もなく,物件事故報告書を作成するだけで,検察官に送致もすることなく事件の処理が終了となります。
もうお判りでしょうが,警察官が物損事故で処理をしたいというのは,事件処理を簡単に終わらすためです。被害者のことなど全く考えてません。
また,保険会社の担当者が物損事故として処理して欲しいというのは,当然,物損事故で処理できれば保険会社の支払いを少なくできるからです。
以下では,怪我をしているのに物損事故で処理をしてしまうとどのようなデメリットがあるかについてみていきたいと思います。
クロノス総合法律事務所では物損事故から人身事故への切り替えもアドバイスできますのでご相談ください!
保険会社が早期に治療費の支払いを打ち切る可能性が高くなる
怪我をしているのに物損事故として処理してしまうケースというのは,むちうちのケースが多いと思います。むちうちは,事故直後はほとんど症状がなかったとしても少し時間が経ってから色々な症状が出てくるということがあるので,思いのほか通院が長くなったりします。
ところが,物損事故で処理をしていると,保険会社は,自賠責の120万円の範囲で解決をしようとするので,治療費が120万円を超える前に治療費の支払いの打ち切りを通告してきます。
保険会社は,人身事故の場合でも早期の治療費の打ち切りはあるのですが,物損事故ではほぼ間違いなく早期で治療費の支払いを打ち切り,長期間の通院を認めることはありません。
物損事故で処理してしまうと,保険会社が治療費の支払いを早期に打ち切る可能性が高くなります。
後遺障害が非該当になる可能が高くなる
交通事故証明書で物損事故となっていた場合,後遺障害の被害者請求をするときには,後遺障害が非該当で返ってくることを覚悟します。
後遺障害の被害者請求をする際には,交通事故証明書を提出するのですが,物損事故の場合,人身事故に比べて明らかに自賠責からの回答が早いので,おそらく調査事務所では,交通事故証明書を確認して物損事故となっていたら,ほとんど調査をせずに非該当と判断して,自賠責に結果を返しているのではないかと思います。
当然,後遺障害が非該当であれば,後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料は認められませんので,保険会社の支払いは少なくなります。
被害者の収入にもよるのですが,後遺障害14級が認められた場合と,非該当の場合とでは,200万円くらいは賠償金の額が違ってきます。
頚椎捻挫と診断されたのに,知らずに善意で物損事故にしてしまうと,200万円の損をする可能性があるということです。
過失割合が不利になる可能性がある
通常,過失割合は交通事故の状況から判断することになります。
基本的には,交通事故の事故態様で当事者の過失割合は決まってくるのですが,当然,その事故特有の事情によって過失割合が変わってくることがあります。
例えば,加害車両が法定速度を超過していたとか,加害車両の運転手が携帯電話を利用していたというような事情です。
実況見分や当事者の事情聴取をしていれば,このような事実がはっきりすることが多いのですが,先ほども説明したように,物損事故として処理してしまった場合,警察は,実況見分や当事者の事情聴取を行いません。
そうすると,その事故特有の事情が分からずに,交通事故の事故態様だけで当事者の過失割合を判断しなければならなくなってしまいます。
もし,加害者の過失を増加する事情があったとしても,それが記録されていなければ,被害者がどんなに主張してもその事情が認められることはありません。
物損事故で処理してしまうと,詳しい事故の状況が判断できないので,被害者の過失割合が不利になってしまう可能性があります。
物損事故でも怪我をして通院していれば慰謝料は請求できる!
物損事故で処理してしまっても怪我をして通院していれば慰謝料を請求できます。
慰謝料は、通院期間や通院回数を基準に算定しますので、物損事故で処理してしまっても通院期間が長くなれば慰謝料もそれなりの金額になることがあります。
もちろん、先ほど説明したように物損事故だと治療費の早期の打ち切りの可能性が高くなるので、それほど長く通院することはできないかもしれませんが、それでも弁護士基準で慰謝料を計算した場合50万円から90万円程度になる可能性があります。
物損事故で処理してしまってもどれくらいの慰謝料が請求できるかは弁護士に相談した方がいいかもしれません。
まとめ
このように,怪我をしているのに物損事故として処理をしてしまうと,被害者に不利になってしまうことが多くあります。
もちろん,怪我をしていないのであれば物損事故で処理することは当然ですが,怪我をしているのに,警察や保険会社の担当者に気を使って,本来,人身事故扱いにすべき事故を物損事故扱いにすることは絶対にしてはいけません。
頚椎捻挫で加療期間1週間という診断であっても,怪我をしていることには間違いありません。医師が作成した診断書を警察に提出すれば,警察は面倒でも人身事故として処理することになりますので,軽くても怪我をした場合には人身事故として処理してもらい,後から失敗したと思うことがないようにしましょう。
また物損事故で処理してしまっても怪我をして通院しているのであれば、慰謝料を請求できる可能性がありますので、あきらめずに弁護士に相談してみましょう。
クロノス総合法律事務所では物損事故から人身事故への切り替えもアドバイスできますのでご相談ください!
交通事故で片方の肩の腱板断裂が生じた後の後遺障害
交通事故で片方の肩の腱板断裂が生じた場合、症状としては疼痛や肩関節の可動域制限が残存しますので、肩関節の機能障害の後遺障害が認定される可能性があります。肩関節の機能障害の後遺障害等級と障害の程度は以下の表のとおりです。なお、関節機能障害の後遺障害が認定された場合、疼痛の症状は機能障害と通常派生する関係にあるため、独立して後遺障害として認定されることはありません。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
---|---|
後遺障害8級 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
後遺障害10級 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
後遺障害12級 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
肩関節の主要運動は、屈曲(前方挙上)、外転(側方挙上)及び内転になりますので、これらの可動域が健側の肩関節と比較してどの程度制限されているかによって、上表の後遺障害等級が認定されることになります。
MRIによって腱板断裂が確認できることが必要
肩の腱板断裂が生じた場合、腱板の状態はレントゲンでは明確に確認ができないため、MRI検査を実施する必要があります。MRI画像で腱板断裂が確認されると、肩関節の機能障害の原因が他覚的所見によって確認されたということになります。
余談ですが、頚椎捻挫を負った被害者の後遺障害診断書に、頚椎の運動障害や肩関節の機能障害が残っていると記載されていることがありますが、運動障害や機能障害は、骨折、脱臼、今回のテーマである腱板断裂などの器質的損傷がなければ認定されません。そのため、頚椎捻挫で頚椎の運動障害や肩関節の機能障害が残ったとしても後遺障害として認定されることはありません。
ときどき、交通事故の患者さんだと、医師が頚椎捻挫程度しか負っていないと思い込んでしまって、事故直後にMRI検査をせず、時間が経っても肩関節の痛みが改善しないため、かなり時間が経ってからMRI検査をしたら腱板が断裂していたことが発見されるということもありますので、交通事故に遭って肩関節の痛みが続くようであれば、できるだけ早期にMRI検査を実施してもらった方がいいと思います。
無症候性の肩の腱板断裂に注意
肩関節の腱板断裂で気を付けなければならないのが無症候性の腱板断裂です。もともと、肩の腱板は50歳以上になると断裂しやすくなるため、外傷とは無関係に断裂をすることが多くあるのですが、その中で腱板断裂が生じているのに症状を感じないケースというのがあり、それを無症候性の腱板断裂といいます。
無症候性の腱板断裂の場合、外傷を原因とする腱板断裂と違い、画像上、骨棘や骨硬化が認められるため、通常は、外傷を原因とする腱板断裂か無症候性の腱板断裂かは判別することができるそうなのですが、ときどき、その判別が難しく、自賠責が外傷を原因とする腱板断裂と判断して、機能障害の後遺障害を認定するケースがあります。
このような場合、無症候性の腱板断裂が事故前から存在していたとして、保険会社側から後遺障害そのものを争われることになります。そのような場合、別の医師の画像診断などを依頼して意見をもらうのですが、無症候性の腱板断裂だったという意見になると、全く反論ができなくなってしまい、後遺障害が否定されてしまいます。後遺障害が否定されると逸失利益も後遺障害慰謝料も認めらなくなってしまい、賠償金がかなり低額になってしまいます。
そのため、被害者が高齢者で、事故の状況などから肩を強打していないのに、腱板断裂が生じている場合には、無症候性の腱板断裂が事故前から存在していた可能性が高いので、この場合は注意が必要です。
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腕や足の骨折後に疼痛の神経症状が残った場合に認定される後遺障害
交通事故で腕や足を骨折をした場合、通常は、固定をすると骨折部が骨癒合して回復に至り症状固定となります。骨折して最終的に症状固定に至っても疼痛が残っている場合には、神経症状の後遺障害が認定される場合があります。腕や足の骨折後に神経症状が残ったときに認定される後遺障害は、むちうちと同じ「局部の神経系統の障害」が認定されます。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
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後遺障害12級 | 局部にがん固な神経症状を残すもの |
後遺障害14級 | 局部に神経症状を残すもの |
12級と14級の違いは,「がん固な神経症状」かどうかにあります。昨日の「むち打ち症で後遺障害の異議申立てをする際の注意点」でも説明をしましたが、「がん固な神経症状」とは「症状の原因を他覚的に証明できる」場合のことをいい、「症状の原因を他覚的に証明できる」場合とは,基本的には,レントゲン,CT,MRIなどの画像によって症状の原因を確認できることを意味します。
そうすると、骨折は、むちうちと違ってレントゲンで確認ができるのだから、常に、12級の後遺障害が認定されるようにも思えます。
神経症状12級の後遺障害の認定には骨折後の変形癒合や癒合不全などが必要
ここで、あらためて後遺障害が何に対して認定されるのかを考えてみると、後遺障害は怪我に対して認定されるのではなく、怪我をして残った症状に対して認定されるものです。そうすると、骨折はあくまで怪我であって、骨折が完全に治ってしまえば、症状が残らないということもあるので、骨折をしただけでは後遺障害が認定されないということもあります。
そのため、レントゲンで骨折が確認しできたとしても、それだけでは12級の後遺障害は認定されないということになります。
では、どのような他覚的所見が認められれば、骨折後の疼痛の症状に対して12級の後遺障害が認定されるのでしょうか。
通常、骨折部の骨癒合が良好であれば、疼痛などの症状は残らないことの多いのですが、骨癒合が良好でない場合に、骨折後に疼痛の症状が残ります。骨癒合が良好でない場合というのは、骨折部に変形癒合や癒合不全などが生じた状態をいいます。
変形癒合とは骨折部が正常でない位置関係で癒合した状態をいいます。
また、癒合不全とは骨折が通常の癒合に至る期間を経過しても癒合しない状態をいいます。癒合不全の状態があまりにも酷いと神経症状の後遺障害よりも重い偽関節の後遺障害が認定されることもあります。
変形癒合もしくは癒合不全は、骨折部に疼痛を生じさせる原因となりますし、いずれもレントゲンで確認することができますので、症状の原因となる他覚的所見が認められ12級の後遺障害が認定されるということになります。
骨癒合が良好でも神経症状14級の後遺障害が認定されることがある
このように、骨折後の疼痛の症状に12級の後遺障害が認定されるためには、変形癒合や癒合不全などが骨折後の骨癒合が良好でない状態が必要となるのですが、骨癒合が良好であれば後遺障害が認められないかというとそうではありません。
骨癒合が良好でも事故後から疼痛の症状があり、症状固定時まで継続していれば、神経症状14級の後遺障害が認定される可能性があります。神経症状14級の後遺障害が認定されるためには、むちうちの場合と同じように症状が続いていて、継続して治療を受けているかという点が重要となります。
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むち打ち症で認定される可能性のある後遺障害
まず,交通事故でむち打ち症になってしまった場合に,むち打ち症で認定される可能性のある後遺障害について確認をしたいと思います。
むち打ち症は,頚部痛,頭痛,吐き気,耳鳴り,腕のしびれなど様々な症状が出現することが多いのですが,自賠責や労災では「神経系統の機能又は精神の障害」のうち「局部の神経系統の障害」の後遺障害が認定される可能性があります。後遺障害等級と障害の程度は以下のとおりです。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
---|---|
後遺障害12級 | 局部にがん固な神経症状を残すもの |
後遺障害14級 | 局部に神経症状を残すもの |
12級と14級の違いは,「がん固な神経症状」かどうかにあります。「がん固な神経症状」といわれても抽象的過ぎてよく分かりませんが,「症状の原因を他覚的に証明できる」場合に「がん固な神経症状」が存在すると判断されて12級の後遺障害が認定されます。
そうすると,今度は,「症状の原因を他覚的に証明できる」場合というのはどのような場合かという疑問が出てきますが,「症状の原因を他覚的に証明できる」場合とは,基本的には,レントゲン,CT,MRIなどの画像によって症状の原因を確認できることを意味します。画像以外にも,症状の原因を確認できる検査等はありますが,少なくともむち打ち症においては画像で症状の原因を確認できることが重要です。
最初の自賠責用の診断書を確認する
むち打ち症で異議申し立てを検討するケースというのは,後遺障害が非該当であった場合が多いと思います。後遺障害が非該当であった場合,まず確認をしなければならないのが,最初の自賠責用の診断書です。自賠責用の診断書とは,受診した病院が保険会社に治療費の請求をする際に発行する診断書です。
診断書ですので「傷病名」を記載する欄があるのですが,傷病名を記載する欄に,「頚椎捻挫」,「外傷性頚部症候群」などむち打ち症の症状の原因となる傷病名が記載されていないと,むち打ち症で後遺障害が認定されることはありません。
例えば,症状固定時に頚部痛の症状があり,後遺障害診断書の自覚症状の欄に「頚部痛」という記載があったとします。それにもかかわらず,最初の自賠責用の診断書に「右肘打撲」の傷病名しかなければ,交通事故で頚部痛の原因となる怪我を負っていなかったという判断をされてしまい,後遺障害は非該当になってしまいます。
異議申し立てをする際に,最初の自賠責用の診断書を確認してむち打ち症の原因となる傷病名が記載されていない場合には,何度異議申立てをしても非該当にしかなりません。
通院期間と通院頻度を確認する
最初の診断書に「頚椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」などむち打ち症の症状の原因となる傷病名が記載されていたら,次に,通院期間と通院頻度を確認します。
むち打ち症の場合,自賠責は通院期間が6ヶ月を下回っている場合,交通事故と症状との間に因果関係がないと判断して非該当としてしまいます。
そうすると,通院期間を確認して6ヶ月を下回っていた場合は異議申立てをしても非該当のままということになってしまいます。ただし,6ヶ月を多少下回っているくらいなら,通院期間の条件をクリアする可能性があるので,厳密に6ヶ月を下回っていたら異議申立てをしても意味がないという訳ではないので注意が必要です。
また,通院期間が6ヶ月以上であったとしても,通院の頻度が極端に少なく,前回の通院から1ヶ月以上の間隔があるような場合にも非該当となってしまいますので,1ヶ月以上の間隔をあけずに通院していたか確認をする必要があります。
画像上の異常所見がないと異議申立てをしても意味がないか
後遺障害が認定されず非該当だったということで相談に来られる方から「レントゲンに何も写ってなかったから非該当だったんですか?」,もしくは「MRIに何も写ってなかったから非該当だったんですか?」と質問されることがあります。
結論から言うと,レントゲンやMRIなどの画像に何も異常が写っていなかったとしても14級の後遺障害に該当する可能性はあります。
レントゲンは,主に骨折の有無を確認するために撮影するものですので,むち打ち症の場合には,ほとんどのケースで異常所見は認められません。
また,MRIも,単純なむち打ち症の場合には異常所見はないケースが多いです。ただし,14級から12級に異議申立てをする際には,MRIで異常所見があることは必須といっていいです。
最初に説明したように,12級と14級の違いは「がん固な神経症状」があるかどうかで,「がん固な神経症状」とは,症状の原因が他覚的所見,主に画像所見で証明できる場合です。そうすると,頚部痛やしびれなどの症状の原因となる神経根の圧迫所見がMRIで確認できなければ,むち打ち症で12級が認定されることはほぼないと言っていいと思います。
むち打ち症で後遺障害の異議申立てをする場合には弁護士にご相談を
むち打ち症のような神経症状の場合,怪我が軽度で症状の原因がはっきりしないということも多くあります。頚椎捻挫と診断されて通院期間が6ヶ月以上であっても非該当となってしまうこともあります。
そのため,むち打ち症の場合,異議申立てをして結果が出るかどうかの判断は非常に難しいので,むち打ち症で後遺障害の異議申立てを検討の方は弁護士へのご相談をお勧めします。
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自賠責保険・共済紛争処理機構とは?
自賠責保険・共済紛争処理機構とは,自賠責保険(自賠責共済含む)からの支払いに関する紛争を公正かつ適確に解決することにより被害者の保護を図ることを目的とした自動車損害賠償保障法に基づいて設立された機関です。
自賠責保険・共済紛争処理機構のホームページによると事業の内容は以下のとおりです。
1.自賠責保険・共済からの支払いに係る紛争の調停事業
2.自賠責保険・共済からの支払いに関する被害者等からの相談等を目的とする事業
3.その他本機構の目的を達成するために必要な事業
このように書いてあると分かりにくいですが,基本的には,自賠責で判断された後遺障害,有無責,重過失減額に関して不服を申し立てる機関と考えて間違いはないと思います。
特徴としては,弁護士,医師,学識経験者(元裁判官,法律学者,交通工学の専門家等)などの交通事故賠償の専門的知識を有する専門家が紛争処理委員となって,紛争処理の審査を行っているという点です。
そのため,自賠責保険・共済紛争処理機構の判断は,自賠責の異議申立ての判断よりも非常に詳細な内容となっており,こちらに不利な判断だったとしても,判断の理由を読むと納得せざるを得ないという点があります。
また,軽度の高次脳機能障害のように画像上の異常が確認しにくいような事案で自賠責では異常所見が見落とされていたような事案でも,しっかりと画像上の異常所見を発見してくれて,高次脳機能障害の後遺障害を認定してくれたということもありました。
個人的には,自賠責保険・共済紛争処理機構でダメだったら諦めがつくと思えるくらい,しっかりとした判断をしてくれると感じています。
異議申立てをしてもダメなら自賠責保険・共済紛争処理機構へ
後遺障害,有無責,重過失減額に関する不服を申し立てる方法としては,自賠責の異議申立てもありますが,自賠責の異議申立てと自賠責保険・共済紛争処理機構はどのような関係にあるのでしょうか。
建前としては,自賠責の異議申立てをしてから自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理の調停の申請をするという関係にあるわけではありません。しかし,あとで説明するように自賠責保険・共済紛争処理機構の判断は,裁判外では最終的な判断でそれ以上争うことができませんので,いきなり自賠責保険・共済紛争処理機構への申請をすると,事務局の方からできれば自賠責の異議申立てをしてからにして欲しいという要望がきます。
確かに,自賠責の異議申立ては,調査事務所というところが判断するのですが,こちらは,追加の検査や追加の資料を求めてくることがあり,申立人が提出した資料以上の資料を集めてから判断することがあるのですが,自賠責保険・共済紛争処理機構は,申請人が提出した限りの資料でしか判断しないことが多いので,先に,自賠責の異議申立てをして,十分な資料が整ってから,自賠責保険・共済紛争処理機構への申請をした方がいいと思います。
紛争処理申請に必要な資料
自賠責保険・共済紛争処理機構へ紛争処理の申請は,書面でしかできない,いわゆる書面主義をとっています。紛争処理の申請に必要な資料は以下のとおりです。
①紛争処理申請書
②紛争に関する申請者の意見を記載した書面
③同意書
④委任状及び委任者の印鑑証明書(代理申請の場合)
⑤交通事故証明書
⑥自賠責保険会社又は共済組合からの通知書(回答書)
⑦申請者の意見を裏付ける資料(診療報酬明細書,事故発生状況報告書,実況見分調書,画像資料,医師の意見書など)
規定上は,自賠責保険・共済紛争処理機構は独自の調査をすることができるので,新たな検査や資料の提出等の依頼を申請者に対してすることができるのですが,これまで,自賠責保険・共済紛争処理機構から新たな検査や資料の提出を求められたことがないので,申請者の意見を裏付ける証拠を十分にそろえてから申請することをお勧めします。
自賠責保険・共済紛争処理機構の判断は裁判外では最終判断
先ほども説明をしましたが,自賠責保険・共済紛争処理機構の判断は,裁判外では最終的な判断となるので,裁判以外では争うことはできません。
もちろん,「裁判外」での最終的な判断なので,裁判を起こして争うことはできますが,自賠責保険・共済紛争処理機構の判断は,提出した資料を十分に検討して詳細な内容となっていますので,正直,自賠責保険・共済紛争処理機構で不利な判断があったときに,これを裁判で争うの相当難しいのではないかと思います。
そのため,自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理の申請は,申請者の意見を裏付ける証拠が十分にそろってから行う必要があります。
歯牙障害とは
歯牙障害とは、一定数以上の歯に「歯科補てつを加えた」場合に認められる後遺障害です。
「歯科補てつを加えた」とは、現実に喪失(抜歯を含む)又は著しく欠損(歯冠部の体積の4分の3以上を欠損)に対する補てつをいいます。
分かりやすく言うと、歯が折れてブリッジにしたり、歯がなくなったところにインプラント治療を施したような場合を言います。
歯牙障害の後遺障害等級と障害の程度は以下の表のとおりです。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
---|---|
後遺障害10級 | 14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
後遺障害11級 | 10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
後遺障害12級 | 7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
後遺障害13級 | 5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
後遺障害14級 | 3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
後遺障害逸失利益が認められないことが多い
歯牙障害の後遺障害で、最も特徴的な点は後遺障害逸失利益を認められないことが多いということです。
先ほど、「歯科補てつを加えた」の例としてブリッジやインプラントにした場合を上げましたが、これは虫歯などの歯周組織の疾患でも行うことがあります。
歯周組織の疾患でブリッジやインプラントにしたからといって仕事ができないという人はいません。
そうすると、当然、交通事故で歯を欠損したり喪失してブリッジやインプラントにしても仕事ができないということにはなりません。
歯牙障害のすべてのケースで逸失利益が認められないということなく、歯を食いしばって力を入れるような仕事の場合には労働能力に影響があると判断されることもあります。
しかし、歯牙障害で逸失利益が認められるケースでも後遺障害等級どおりの労働能力喪失率は認められない可能性が高いです。
歯牙障害の後遺障害の場合、逸失利益が認められる後遺障害と違って、原則、逸失利益は認められず、例外的に逸失利益が認められると考えて間違いないと思います。
そうすると、歯牙障害で逸失利益の請求をするのであれば、被害者側で積極的に歯牙障害によって労働能力を喪失しているという証拠を出す必要があるということになります。
既存障害があることが多い
歯牙障害は既存障害があること多いという特徴があります。
既存障害とは、事故に遭う前からすでに後遺障害があることを言います。例えば、歯牙障害でいえば、事故に遭う前から歯周組織の疾患によって一定数の歯にブリッジやインプラントにしていたような場合を言います。
既存障害がある場合、事故によって同一部位(同一系列)に障害が生じても加重障害にならなければ、その事故によって新たな後遺障害が残ったという判断がされません。
加重障害とは、事故前から障害が残存していたところに交通事故によって新たな障害が加わった結果、事故によって生じた新たな障害が既存障害の程度よりも重くなった状態のことを言います。
例えば、交通事故に遭う前から5歯に歯科補てつを加えていた場合、13級の既存障害があるということになります。
そうすると、交通事故によって5歯に歯科補てつを加えても、13級を超える障害が残っていないので加重障害とならず、7歯以上に歯科補綴を加えて初めて加重障害となり後遺障害が認定されることになります。
この場合、後遺障害は、現存障害で12級、既存障害で13級と認定されることになります。
このように既存障害があって加重障害になった場合は、12級の自賠責保険金224万円から13級の自賠責保険金139万円を差し引いた85万円が自賠責保険金として支払われる金額になります。
既存障害があって加重障害になった場合には、賠償上でも、後遺障害逸失利益の労働能力喪失率が差し引かれることになります。
先ほどの例で、仮に逸失利益が認められるとした場合、12級の喪失率14%から13級の喪失率9%を差し引くことになるので、現存障害12級、既存障害13級の労働能力喪失率は5%ということになります。
また、後遺障害慰謝料も同じように差し引かれることになるので、先ほどの例でいえば、12級の290万円から13級の180万円を差し引いて、後遺障害慰謝料は90万円となってしまいます。
歯牙障害の場合、もともと虫歯治療等で多数の歯に歯科補てつを加えていることが多いので、既存障害があることが非常に多いです。
私が今まで経験した歯牙障害の事例では、ほぼ既存障害がありました。
そうすると、先ほど説明したように、歯牙障害の場合、後遺障害逸失利益が認められないことが多いので、ただでさえ賠償金がほかの後遺障害よりも小さくなってしまうのに、後遺障害慰謝料も等級どおりの慰謝料とならないので、さらに賠償金が小さくなってしまうということになります。
インプラントは問題の宝庫!
上部構造に高額な素材を使ってしまった場合
交通事故によって歯を欠損すると、歯科医がインプラント治療をするということが多くのケースで見られます。
インプラント治療で最も困るのは、交通事故で保険会社がすべての治療費を支払ってくれると勘違いして、オールセラミックなど非常に高額な上部構造を使用してしまうことがあるということです。
インプラント治療はもともと1本15万円から30万円程度もかかるため、治療費が高額になりやすいのですが、上部構造に高額な素材を使用されるとさらに1本あたり10万円から20万円程度金額が上がってしまうので、治療費が非常に高額なります。
そうすると、保険会社から、上部構造に高額な素材を使用することは、交通事故と相当因果関係がないとしてインプラントの治療費を争われることになってしまいます。
そして、裁判でも上部構造の高額な素材は審美目的と判断されてしまい、相当額まで治療費を減額されてしまうということがあります。
インプラントの交換費用は認められにくい
また、以前は、インプラントは数年したら交換しなければならないと言われていたような時代もあったので、インプラントの交換費用が数年おきに必要になるとして、インプラントの交換費用を認めた裁判例もあったのですが、個人的な感覚としては、今はインプラントの交換費用をそのまま認めるということはなくなってきているように思います。
まだ、保険会社側から主張されたことはないんですが、インプラントの永久保証をうたっているような歯科医院もあるので、メンテナンスをしていれば定期的に交換する必要はあまりないのかもしれません。
そのかわり、どの歯科医院もインプラントのメンテナンスは必須で、定期的にしないといけないと説明していますし、保証の条件に定期的なメンテナンスをしているということがあげられていますので、メンテナンス費用については、将来分も含めて認められる可能性が高いと思います。
実際に、歯牙障害の後遺障害だけの事案で裁判をした時もメンテナンス費用は将来分も含めて認められました。
後遺障害慰謝料もそれほど増額しない
後遺障害逸失利益が認められない後遺障害の場合には、後遺障害慰謝料を増額するというのが定番です。
しかし、同じく逸失利益が認められにくい男性の外貌醜状と比べると歯牙障害の場合、後遺障害慰謝料の増額幅が小さいように思います。
しかも、先ほど説明したように、歯牙障害の場合、既存障害より後遺障害慰謝料がすでに減額されていることが多いので、増額されても後遺障害等級に見合った金額まで増額しないということも多くあります。
歯牙障害の後遺障害が認定されたら弁護士に相談しよう
ただし、歯牙障害の後遺障害が認定される場合は、顔の骨を骨折していたり、顔に大きな傷が残ってしまい、神経症状や外貌醜状の後遺障害が認定されていることも多くあります。
ほかの後遺障害が認定されている場合には、逸失利益が認められる可能性が高いため、賠償金も高額になる可能性があります。
それでも保険会社は、低額な逸失利益しか認めない可能性が高いので、歯牙障害の後遺障害だけしか認定されていな場合も、ほかの後遺障害が認定されている場合も弁護士に相談しましょう。
歯牙障害の解決実績
歯牙障害の場合、後遺障害逸失利益が認められにくいという話をしましたが、当事務所では、歯牙障害の後遺障害事案でも、後遺障害逸失利益を認めさせた上で、高額の賠償金を獲得した事案がありますので、歯牙障害の後遺障害が認定されたという方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
30代女性 神経症状12級 歯牙障害13級 併合11級 約2100万円で解決(異議申立てにより13級から併合11級認定!)
【交通事故のご相談の重点対応地域(神奈川県全域)】
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