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逸失利益 | 【公式】横浜の交通事故に強い弁護士《クロノス総合法律事務所》

減収が認められない被害者の方でも逸失利益が認められた裁判所和解案で解決することができました。詳しくは解決実績をご覧ください。

交通事故でフロントガラスが顔面に突き刺さった影響で女優を引退

先日,山の日で休日だったので久々にゴールデンタイムにテレビを見ていたところ,TBSの「爆報!THEフライデー」という番組で,岡寛恵さんという女優さんのことが取り上げられていました。

「爆報!THEフライデー」によると,女優の岡寛恵さんは,14歳の時に大林宣彦監督の「時をかける少女」で主演の原田知世さんの妹役を演じるなど,若いうちから女優として実績を残された方だったようです。

ところが,19歳の時に,対向車線を走っていた自動車が,岡寛恵さんが乗っていた自動車に衝突するという交通事故に遭い,その際に,岡寛恵さんは,フロントガラスに顔面を強打し,割れたフロントガラスが顔面に突き刺さり,顔面に無数の傷跡が残る怪我を負ったそうです。顔面の傷跡は20か所以上で,治療をしても傷跡が残ってしまったために,女優生命を絶たれ,19歳で女優を引退しなければならなくなったそうです。

ただ,現在は,顔面形成外科手術を受けて傷跡はほとんど消えて,女優や声優さんとして復帰されているそうです。

女優の外貌醜状の後遺障害

女優さんにとって顔に傷を負うというのは,職業的には致命傷といっていいと思います。ところが,自賠責では,職業的な違いを考慮することなく,決まった条件によって後遺障害の認定をすることになりますので,女優さんだからといって外貌醜状の後遺障害で1級になるというようなことはありません。

女優さんであっても,醜状の程度によって以下の7級から12級の後遺障害が認定されることになります。

後遺障害等級障害の程度醜状の程度
後遺障害7級外貌に著しい醜状を残すもの①頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含まない。)以上の瘢痕又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損
②顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没
③頚部にあっては、てのひら大以上の瘢痕
①から③が人目につく程度以上のもの
後遺障害9級外貌に相当程度の醜状を残すもの顔面部の長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの
後遺障害12級外貌に醜状を残すもの①頭部にあっては、鶏卵大以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
②顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線条痕
③頚部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕

岡寛恵さんの場合,顔面の傷跡が20か所以上ということだったので,この場合には,おそらく7級の後遺障害が認定されることになると思います。

女優の外貌醜状の逸失利益

外貌醜状は,後遺障害による逸失利益が認められるかということが問題となります。

外貌に醜状が残っても,労働能力が低下したわけではないから,後遺障害による逸失利益は認められないのではないかという問題意識です。

しかし,顔面に傷跡が残れば人前に出るような仕事や人と対面するような仕事の場合,労働能力に影響があることは間違いありません。ましてや,岡寛恵さんの場合は女優としての仕事ができなくなってしまったのですから外貌醜状による逸失利益が認められることは間違いありません。

後遺障害による逸失利益は

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

という計算式で計算をすることになるので,以下では,岡寛恵さんの交通事故で,労働能力喪失率,基礎収入,労働能力喪失期間がどのように判断されることになるのか考えてみたいと思います。

労働能力喪失率

通常,労働能力喪失率は,後遺障害等級ごとに決まっていて,例えば,7級の後遺障害であれば56%と定められています。

ところが,外貌醜状の後遺障害の場合,先ほど説明したように労働能力が低下したかどうかが問題になるので,逸失利益が認められる場合でも,後遺障害等級ごとに定められている通常の労働能力喪失率よりも下げられることが多くあります。

では,女優さんに外貌醜状が残った場合も同じように労働能力喪失率は下げられてしまうのでしょうか?

岡寛恵さんの場合,実際に女優として活躍し実績があったので,この事実はかなり重視する必要があると思います。

おそらく,実績のない女優さんの場合には,労働能力喪失期間のうち最初の10年くらいを等級どおりの労働能力喪失率として,それ以降を一定程度下げた労働能力喪失率を認定する可能性が高いと思います。

しかし,実績のある女優さんの場合,外貌醜状がなければ長い期間女優として活躍した可能性が高いので,労働能力の喪失の程度は大きいと評価されるように思います。

そうすると,岡寛恵さんの場合は,外貌醜状の後遺障害であったとしても,後遺障害等級どおりの労働能力喪失率が認められる可能性が高いのではないかと思います。

基礎収入

基礎収入は,基本的には事故前年の年収を基準とします。被害者の年齢が30歳未満の場合には,賃金センサスの平均賃金を基礎収入とすることもあります。

当時の19歳の女優さんの年収がどの程度の金額なのかは知りませんが,おそらく,高卒で一般的な仕事に就いた女性と比べると高い収入を得ていた可能性が高いと思います。

そうすると,基本的には,賃金センサスを使わずに事故前年の年収を基礎収入とする可能性が高いと思います。

ただし,女優さんのように毎年仕事によって収入が変わる仕事は,保険会社側から,就労可能年齢の67歳まで同じ年収が続く可能性は低いと反論されることがあります。

賃金センサスの平均賃金よりもはるかに高額な年収だった場合には,このような反論が認められる可能性もありますが,賃金センサスの平均賃金よりも100万円から200万円高い程度であれば,おそらく事故前年の年収を基礎収入とすることになるのではないかと思います。

可能性としては低いように思いますが,もし,事故前年の年収が賃金センサスの平均賃金よりも低い場合には,19歳と若年者であることから,賃金センサスの平均賃金が基礎収入となります。

労働能力喪失期間

通常,労働能力喪失期間は,症状固定時の年齢から67歳までの期間とします。仮に,症状固定時の年齢が事故から1年後の20歳であったのであれば,労働能力喪失期間は47年となります。

ところが,外貌醜状の後遺障害の場合,労働能力喪失率を下げ,さらに,労働能力喪失期間まで短くするという判断をされることがあります。

特に,主婦に外貌醜状の後遺障害が残ったようなケースでは,労働能力喪失率,労働能力喪失期間ともに通常のケースを下回るような内容になることが多くあります。

女優さんの場合,ほかの仕事に比べて,外貌醜状による労働能力喪失の程度が大きいことは間違いありませんし,定年のない仕事ですので,実績のある女優さんであれば,長い期間女優として仕事をすることになると思います。このような事情を考慮すれば,外貌醜状であっても,女優さんの場合には労働能力喪失期間は,就労可能年齢の67歳まで認められる可能性が高いのではないかと思います。

まとめ

外貌醜状の場合,後遺障害による逸失利益は必ずといっていいくらい争点になります。仕事が女優さんであれば尚更だと思います。

外貌醜状で後遺障害による逸失利益が認められるためには,外貌醜状により仕事上どのような影響が出る可能性があるのかということを詳しく主張する必要があります。仕事上どのような影響が出るかをしっかりと主張できなければ,外貌醜状の後遺障害による逸失利益は否定されてしまいますので,外貌醜状で保険会社から後遺障害による逸失利益を否定されている場合には,弁護士に相談することをお勧めします。

仕事を休んだり、後遺障害が残っても休業損害や逸失利益を争われる仕事とは?

交通事故に遭って仕事を休んで収入が得られなければ休業損害が認められます。また、後遺障害が残れば後遺障害による逸失利益が認められます。

通常、仕事を持っている人が被害者になった場合には、仕事を休めば休業損害が認めれますし、後遺障害が残れば逸失利益が認められます。

ところが、仕事を持っているにもかかわらず休業損害や逸失利益がないと保険会社から争われる場合があります。それは、会社の役員として仕事をしている人が被害者になった場合です。

加害者側に弁護士がついた場合には、会社の役員というだけで休業損害をすべて否定したり、逸失利益を全く認めないということはないのですが、保険会社の担当者と示談交渉をしていると、ときどき、被害者が会社の役員というだけで休業損害も逸失利益も認めないと主張してくる担当者がいます。

驚くことに被害者が会社の役員の事案で被害者側の保険会社に弁護士費用特約で弁護士費用を請求した際に、担当者から休業損害と逸失利益を損害額から外して着手金の請求をして下さいと言われたこともあります。

保険会社の担当者は、裁判例をよく理解していない担当者も多いので、会社の役員というだけで休業損害も逸失利益も認められないといってくることが本当に多いです。

会社の役員の休業損害や逸失利益が問題になる理由

では、なぜ会社の役員の休業損害や逸失利益は問題になることが多いのでしょうか。

通常、会社の役員の場合、会社から給与ではなく役員報酬という名目で報酬の支払いがなされています。一般的に、役員報酬は、決まった金額か、もしくは役員報酬基準に従って計算された金額が支払われるようになっているため、残業をしたから金額が増えるという性質のものではありません。

逆に言うと、働かなかったとしても報酬として会社から支払われるケースもあります。このような役員報酬のことを利益配当的な報酬と言ったりします。

休業損害や逸失利益は、怪我や後遺障害によって働けなくなり収入が得られなくなったことに対して認められる損害ですので、もし、役員報酬が働かなくても支払われるものであれば、休業損害や逸失利益は発生していないということになります。

このように、役員報酬が働かなかったとしても支払われるケースがあるために、役員の休業損害や逸失利益が問題になることがあるのです。

労務対価性がある報酬については休業損害も逸失利益も認められる

確かに、家族経営の会社などでは、税金対策のために家族を名目だけ役員として報酬を支払うというような場合がありますが、このような場合に、名目だけの役員が事故に遭っても、実際に仕事を休んだわけでも、後遺障害によって将来的に役員報酬が得られなくなるわけでもないので、休業損害や逸失利益を否定されてもやむを得ません。

しかし、役員として実際に仕事をしている人まで、役員というだけで休業損害や逸失利益を否定されるいわれはありません。

最高裁判例も、以下のように判断して役員の休業損害や逸失利益を認めています。

「企業主が生命もしくは身体を侵害されたため、その企業に従事することができなくなったことによって生ずる財産上の損害は、原則として、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によって算定すべきである」と判断しています(最判昭和43年8月2日)。

この最高裁の考え方は、役員報酬のうち労務対価部分については休業損害や逸失利益を認め、利益配当部分については休業損害や逸失利益を認めないという労務対価説という考え方によるものです。

利益配当部分というのは、先ほど説明した税金対策のための役員報酬や役員が株主も兼ねており株式配当分が含まれているような役員報酬を指します。

このように、役員であっても役員報酬が労務の対価として支払われている場合には、役員が交通事故で仕事を休んだり、後遺障害を残した場合には、休業損害も逸失利益も認められるので、役員というだけで休業損害や逸失利益を否定する保険会社の担当者の主張はおかしいということになります。

役員というだけで、保険会社が休業損害や逸失利益を否定してきたときには、必ず弁護士に相談して下さい。

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減収がないからといって後遺障害逸失利益が認められないわけではない

後遺障害逸失利益とは,後遺障害によって将来的に得られなくなってしまった収入を損害とするものです。

後遺障害逸失利益を損害として考えるときに,実際に減収が発生していない場合に逸失利益が認められるかという問題があります。この問題については,差額説と労働能力喪失説という考え方があります。

基本的には,差額説に基づいて逸失利益を考えることになるのですが,差額説の考え方は,「交通事故がなければ被害者が得られたであろう収入と,事故後に現実に得られる収入との差額」を損害とするので,この考え方を厳格に貫くと,減収が発生していない場合には逸失利益は認められないということになってしまいます。

そうすると,表題の公務員の場合,事故後に減収が発生していないということが多いので,公務員に逸失利益は認められないのではないかという問題が出てきてしまいます。

かつての最高裁判例には,後遺障害等級が5級とわりと重い後遺障害であったにもかかわらず,減収がないというだけで逸失利益を否定したものもあります(最判昭和42年11月10日)

しかし,減収がなければ逸失利益がないとしてしまうと,公務員が被害者になった場合,多くのケースで逸失利益がないとされてしまいます。

上記の最高裁判例の後に出された最高裁判例では,原則として減収がなければ逸失利益が認められないとしながらも,後遺障害によって被害者に経済的不利益が認められるような特段の事情がある場合には,減収がなくても逸失利益が認められるという判断をしています(最判昭和56年12月22日)。

減収がない場合にどのような事情があれば後遺障害逸失利益が認められるのか?

では,後遺障害によって被害者に経済的不利益が認められる特段の事情とは,どのような事情をいうのでしょうか?先ほどの最高裁判例は,以下のような判断を示しています。

「後遺症に起因する労働能力低下に基づく財産上の損害があるというためには,たとえば,事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって,かかる要因がなければ収入の減少を来しているものと認められる場合とか,労働能力喪失の程度が軽微であっても,本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし,特に昇給,転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など」

この最高裁判例では,減収がなくても逸失利益が認められる事情として,本人の努力によって減収が生じていない場合,職業の性質から特に昇給,転職等に際して不利益な取り扱いを受けるおそれがある場合を上げています。

これ以外にも,裁判例を見てみると,勤務先の配慮によって減収が生じていないという事情がある場合にも特別の事情があると判断しているものもあります。

公務員の給与制度から後遺障害逸失利益を考える

公務員は,減収がないという理由で逸失利益が争われることが最も多い職業だと思います。多くのケースでは,減収がないどころか収入が増えているということもあります。

しかし,事故後に減収がなかったり収入が増えたりすることが多いのは,公務員の給与制度によるところが多いと思います。

特に,地方公務員は,「級」と「号給」の組み合わせによって給与額がきまるという給与制度になっており,よほどの事情がない限り「級」や「号給」が下がることがないので,給与が下がることもありません。

地方公務員の給与制度は,条例によって具体的に定められているのですが,「級」や「号給」の上がり方も規定されています。規定の詳細については説明を省きますが,基本的な条件を満たしていれば,毎年決まった数の「号給」が上がり,一定の「号給」に達すると「級」が上がるというような規定になっています。

そうすると,基本的に,公務員は一定の条件を満たしていれば,毎年給与が上がっていくということになります。

毎年決まった数の「号給」が上がる条件の1つに出勤日数があり,この出勤日数を下回ると「号給」は決まった数上がりません。

交通事故に遭って重傷を負うと,仕事を長期間休むようになるため,決まった数「号給」が上がる条件の出勤日数に達しないということがあります。このような場合でも,「号給」が下がらないので,事故後の給与額は事故前の給与額を下回りません。

しかし,「号給」が決まった数上がらないと,「級」が上がるのが遅くなるという事態が生じます。

先ほど説明したように,地方公務員は「級」と「号給」の組み合わせによって給与額が決まる給与制度ですので,「級」が上がるのが遅くなると,事故に遭う前に比べて給与額が上がるペースが遅くなるという不利益が生じます。

しかも,「号給」が決まった数以上に上がる条件は極めて厳しいため,普通に仕事をしている限りでは,毎年,決まった数の「号給」しか上がらず,事故の時に上がらなかった「号給」を後から取り戻すということはほぼ不可能です。

そうすると,一度,給与額が上がるペースが遅くなると定年まで毎年,昇給幅が抑えられるという不利益が生じます。

このように,公務員の場合は,減収がなくても毎年のように昇給幅が事故前に比べて抑えられるという不利益が生じることがあります。このような観点から,逸失利益が生じているという主張をすることができると思います。

歯牙障害とは

歯牙障害とは、一定数以上の歯に「歯科補てつを加えた」場合に認められる後遺障害です。

「歯科補てつを加えた」とは、現実に喪失(抜歯を含む)又は著しく欠損(歯冠部の体積の4分の3以上を欠損)に対する補てつをいいます。

分かりやすく言うと、歯が折れてブリッジにしたり、歯がなくなったところにインプラント治療を施したような場合を言います。

歯牙障害の後遺障害等級と障害の程度は以下の表のとおりです。

後遺障害等級障害の程度
後遺障害10級14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
後遺障害11級10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
後遺障害12級7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
後遺障害13級5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
後遺障害14級3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

後遺障害逸失利益が認められないことが多い

歯牙障害の後遺障害で、最も特徴的な点は後遺障害逸失利益を認められないことが多いということです。

先ほど、「歯科補てつを加えた」の例としてブリッジやインプラントにした場合を上げましたが、これは虫歯などの歯周組織の疾患でも行うことがあります。

歯周組織の疾患でブリッジやインプラントにしたからといって仕事ができないという人はいません。

そうすると、当然、交通事故で歯を欠損したり喪失してブリッジやインプラントにしても仕事ができないということにはなりません。

歯牙障害のすべてのケースで逸失利益が認められないということなく、歯を食いしばって力を入れるような仕事の場合には労働能力に影響があると判断されることもあります。

しかし、歯牙障害で逸失利益が認められるケースでも後遺障害等級どおりの労働能力喪失率は認められない可能性が高いです。

歯牙障害の後遺障害の場合、逸失利益が認められる後遺障害と違って、原則、逸失利益は認められず、例外的に逸失利益が認められると考えて間違いないと思います。

そうすると、歯牙障害で逸失利益の請求をするのであれば、被害者側で積極的に歯牙障害によって労働能力を喪失しているという証拠を出す必要があるということになります。

既存障害があることが多い

歯牙障害は既存障害があること多いという特徴があります。

既存障害とは、事故に遭う前からすでに後遺障害があることを言います。例えば、歯牙障害でいえば、事故に遭う前から歯周組織の疾患によって一定数の歯にブリッジやインプラントにしていたような場合を言います。

既存障害がある場合、事故によって同一部位(同一系列)に障害が生じても加重障害にならなければ、その事故によって新たな後遺障害が残ったという判断がされません。

加重障害とは、事故前から障害が残存していたところに交通事故によって新たな障害が加わった結果、事故によって生じた新たな障害が既存障害の程度よりも重くなった状態のことを言います。

例えば、交通事故に遭う前から5歯に歯科補てつを加えていた場合、13級の既存障害があるということになります。

そうすると、交通事故によって5歯に歯科補てつを加えても、13級を超える障害が残っていないので加重障害とならず、7歯以上に歯科補綴を加えて初めて加重障害となり後遺障害が認定されることになります。

この場合、後遺障害は、現存障害で12級、既存障害で13級と認定されることになります。

このように既存障害があって加重障害になった場合は、12級の自賠責保険金224万円から13級の自賠責保険金139万円を差し引いた85万円が自賠責保険金として支払われる金額になります。

既存障害があって加重障害になった場合には、賠償上でも、後遺障害逸失利益の労働能力喪失率が差し引かれることになります。

先ほどの例で、仮に逸失利益が認められるとした場合、12級の喪失率14%から13級の喪失率9%を差し引くことになるので、現存障害12級、既存障害13級の労働能力喪失率は5%ということになります。

また、後遺障害慰謝料も同じように差し引かれることになるので、先ほどの例でいえば、12級の290万円から13級の180万円を差し引いて、後遺障害慰謝料は90万円となってしまいます。

歯牙障害の場合、もともと虫歯治療等で多数の歯に歯科補てつを加えていることが多いので、既存障害があることが非常に多いです。

私が今まで経験した歯牙障害の事例では、ほぼ既存障害がありました。

そうすると、先ほど説明したように、歯牙障害の場合、後遺障害逸失利益が認められないことが多いので、ただでさえ賠償金がほかの後遺障害よりも小さくなってしまうのに、後遺障害慰謝料も等級どおりの慰謝料とならないので、さらに賠償金が小さくなってしまうということになります。

インプラントは問題の宝庫!

上部構造に高額な素材を使ってしまった場合

交通事故によって歯を欠損すると、歯科医がインプラント治療をするということが多くのケースで見られます。

インプラント治療で最も困るのは、交通事故で保険会社がすべての治療費を支払ってくれると勘違いして、オールセラミックなど非常に高額な上部構造を使用してしまうことがあるということです。

インプラント治療はもともと1本15万円から30万円程度もかかるため、治療費が高額になりやすいのですが、上部構造に高額な素材を使用されるとさらに1本あたり10万円から20万円程度金額が上がってしまうので、治療費が非常に高額なります。

そうすると、保険会社から、上部構造に高額な素材を使用することは、交通事故と相当因果関係がないとしてインプラントの治療費を争われることになってしまいます。

そして、裁判でも上部構造の高額な素材は審美目的と判断されてしまい、相当額まで治療費を減額されてしまうということがあります。

インプラントの交換費用は認められにくい

また、以前は、インプラントは数年したら交換しなければならないと言われていたような時代もあったので、インプラントの交換費用が数年おきに必要になるとして、インプラントの交換費用を認めた裁判例もあったのですが、個人的な感覚としては、今はインプラントの交換費用をそのまま認めるということはなくなってきているように思います。

まだ、保険会社側から主張されたことはないんですが、インプラントの永久保証をうたっているような歯科医院もあるので、メンテナンスをしていれば定期的に交換する必要はあまりないのかもしれません。

そのかわり、どの歯科医院もインプラントのメンテナンスは必須で、定期的にしないといけないと説明していますし、保証の条件に定期的なメンテナンスをしているということがあげられていますので、メンテナンス費用については、将来分も含めて認められる可能性が高いと思います。

実際に、歯牙障害の後遺障害だけの事案で裁判をした時もメンテナンス費用は将来分も含めて認められました。

後遺障害慰謝料もそれほど増額しない

後遺障害逸失利益が認められない後遺障害の場合には、後遺障害慰謝料を増額するというのが定番です。

しかし、同じく逸失利益が認められにくい男性の外貌醜状と比べると歯牙障害の場合、後遺障害慰謝料の増額幅が小さいように思います。

しかも、先ほど説明したように、歯牙障害の場合、既存障害より後遺障害慰謝料がすでに減額されていることが多いので、増額されても後遺障害等級に見合った金額まで増額しないということも多くあります。

歯牙障害の後遺障害が認定されたら弁護士に相談しよう

ただし、歯牙障害の後遺障害が認定される場合は、顔の骨を骨折していたり、顔に大きな傷が残ってしまい、神経症状や外貌醜状の後遺障害が認定されていることも多くあります。

ほかの後遺障害が認定されている場合には、逸失利益が認められる可能性が高いため、賠償金も高額になる可能性があります。

それでも保険会社は、低額な逸失利益しか認めない可能性が高いので、歯牙障害の後遺障害だけしか認定されていな場合も、ほかの後遺障害が認定されている場合も弁護士に相談しましょう。

歯牙障害の解決実績

歯牙障害の場合、後遺障害逸失利益が認められにくいという話をしましたが、当事務所では、歯牙障害の後遺障害事案でも、後遺障害逸失利益を認めさせた上で、高額の賠償金を獲得した事案がありますので、歯牙障害の後遺障害が認定されたという方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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30代女性 外貌醜状9級、歯牙障害12級 約3200万円獲得(逸失利益が認められにくい後遺障害で高額賠償!)

脊柱変形の後遺障害

脊柱とは,頚椎,胸椎,腰椎,仙骨,尾椎から構成されるもので,躯幹を支持し,同時に上肢や下肢からの力学的並びに神経学的情報を脳に伝えるための重要な組織のことを言います。

脊柱の機能は,躯幹の支持性,脊椎の可動性,脊髄などの神経組織の保護の3つに集約されます。

ただし,後遺障害の認定においては,脊柱の後遺障害は,頚部及び体幹の支持機能,保持機能,運動機能に着目したものであるため,仙骨と尾椎は脊柱に含まれません。

脊柱変形とは,脊椎骨折,圧迫骨折,脱臼により脊椎に変形を残す後遺障害です。

圧迫骨折は、レントゲンで骨折していることが確認されれば後遺障害が認定されますので、脊柱変形の後遺障害の原因で1番多い骨折になります。

脊椎の変形の程度によって以下の表のとおり6級,8級,11級に区分されています。

後遺障害等級障害の程度具体的な基準
後遺障害6級脊柱に著しい変形を残すものエックス線写真,CT画像又はMRI画像により,脊椎圧迫骨折等を確認できる場合で以下のいずれかに該当する場合
①脊椎圧迫等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し,後彎が生じているもの。
②脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後彎が生じるとともに,コブ法による側弯度が50度以上となっているもの。
後遺障害8級脊柱に中等度の変形を残すものエックス線写真,CT画像又はMRI画像により,脊椎圧迫骨折等を確認できる場合で以下のいずれかに該当する場合
①脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後彎が生じているもの
②コブ法による側弯度が50度以上であるもの
③環椎又は軸椎の変形・固定により,次のいずれかに該当するもの。
ⅰ60度以上の回旋位になっているもの
ⅱ50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
ⅲ側屈位となっており,エックス線写真等により,矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
後遺障害11級脊柱に変形を残すもの①脊椎圧迫骨折等を残しており,そのことがエックス線写真等により確認できるもの
②脊椎固定術が行われたもの
③3個以上の脊椎について,椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの

脊柱変形の労働能力の喪失が問題になった経緯

以前,脊柱変形は6級と11級しかなく,後遺障害を認定する具体的基準も現在とは異なるものでした。

例えば,6級は,「レントゲン写真上明らかな脊柱圧迫骨折または脱臼等に基づく強度の亀背・側弯等が認められ,衣服を着用していても,その変形が外部から明らかに分かるもの」という内容でした。

現在の具体的基準は客観的な基準になっていますが,以前は,「衣服を着用していても,その変形が外部から明らかに分かるもの」というやや主観的な条件も含まれていました。

このような基準であったため,著名な整形外科の医師が「着衣の上から分かる程度の変形であれば6級(喪失率67%)とすることは,それがもたらす労働能力の低下となると過大評価である」と指摘したということがありました。

また,11級については,「脊椎圧迫後の変形では,労働能力の実質的喪失は,ほとんど無いに等しい」という指摘もありました。

このように,著名な整形外科医が脊柱変形の労働能力の喪失に疑問を呈したことから,脊柱変形によって労働能力は喪失しないという主張が保険会社側からされるようになったのです。

基本的に脊柱変形でも労働能力の喪失は認められるべき!

脊柱変形は,これにより頚部及び体幹の支持機能,保持機能,運動機能が低下するという点を評価して後遺障害とされているものです。

頚部や体幹の支持機能,保持機能,運動機能が低下すれば,当然,労働能力に影響をありますので,基本的には,脊柱変形による労働能力の喪失は認められるべきだと思います。

裁判官が中心となって編集された「交通関係訴訟の実務」にも以下のような説明があります。

「脊柱変形は,脊椎骨折に由来する器質的障害であるが,脊柱の支持性及び運動性を減少させるとともに,骨折した脊椎の局所に疼痛や易疲労性を生じさせ得るものといわれている。そして,障害等級認定基準の見直しの経緯及び内容を踏まえると,高度の脊柱変形については,基本的には現在の後遺障害等級表の等級及び労働能力喪失率表の喪失率を採用すれば足りると考えられる。」(森冨義明,村主隆行編著「交通関係訴訟の実務」207頁)

このように,裁判所も少なくとも高度の脊柱変形である6級については,等級通りの67%の喪失率があると考えています。

では,11級の脊柱変形についての労働能力喪失についてはどのように考えられているのでしょうか。

同じく「交通関係訴訟の実務」では以下のように説明されています。

「脊柱変形が軽微なものにとどまる場合には,このような取り扱いが相当ではないこともあり得る。このような場合には,被害者の職業,神経症状その他の症状の有無及び内容等を総合的に考慮して判断することになろう」(森冨義明,村主隆行編著「交通関係訴訟の実務」207頁)

このように,実務では,軽微な脊柱変形であったとしても,直ちに労働能力の喪失が否定されるわけではなく,被害者の職業,神経症状その他の症状の有無及び内容等を総合的に考慮して判断するという取り扱になっています。

私が担当した交通事故で11級の脊柱変形が認定された事案では,脊椎の運動機能は低下しているので,周辺の筋肉がこわばることで痛みの症状が現れるということが多く,また,疲れやすくなったり疲れが取れにくくなったりで仕事に影響のあるケースばかりでした。

そのため,11級の脊柱変形の事案でも,労働能力の喪失を否定されたという件は1件もなく,すべてのケースで11級の喪失率20%がそのまま認められました。

11級の脊柱変形ですと,労働能力の喪失が争われやすいですが,脊柱変形により出現している症状とその症状による仕事の支障の程度をしっかりと主張することが労働能力の喪失を認めさせる上で大事なのではないかと思います。

脊柱変形の後遺障害慰謝料は最低でも420万円、賠償金は1000万円を超えることもあります。

脊柱変形の後遺障害が認定された場合、等級は最低でも11級になります。

後遺障害11級の後遺障害慰謝料は弁護士基準で420万円になります。

逸失利益の労働能力喪失率は11級で20%、もし労働能力喪失率が下げられても12級の14%は維持されることが多いです。

そのため、脊柱変形の後遺障害が認定された場合、被害者に大きな過失がない限り賠償金は1000万円以上になることが多いです。

保険会社は脊柱変形の後遺障害の場合、必ず労働能力喪失率を下げてきますし、後遺障害慰謝料も弁護基準では提示しませんの420万円を下回ります。

保険会社から100万円を超えるような賠償金の提示があっても、圧迫骨折をしている場合や圧迫骨折で脊柱変形の後遺障害が認定された場合には、示談する前に弁護士に相談しましょう。

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死亡事故の逸失利益

逸失利益とは,将来生きていれば得られたはずの収入を填補するという損害項目です。

死亡事故の逸失利益は,賠償金の大部分を占めますのでどのように計算をするかをしっかりと理解しておく必要があります。死亡事故の逸失利益は以下の計算式で計算をします。

基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

死亡事故一般については,「死亡事故で知っておくべき知識」をご覧ください。

学生の逸失利益

基礎収入

基本的に学生は仕事をしていないので収入がありません。しかし,将来仕事をすることは間違いありませんので,学生の場合も逸失利益は認められます。

死亡事故の逸失利益の計算(主婦の場合)でも書きましたが,交通事故に遭った当時に収入がない被害者の方の場合には賃金センサスの平均賃金を使います。

学生といっても,小学生,中学生,高校生,専門学校生,大学生とあります。学生の場合は,賃金センサスのうち学歴計全年齢の平均賃金,もしくは大卒の平均賃金のいずれを用いるかが問題になります。もちろん,平均賃金は大卒の方が高額になります。

学生のうち,専門学校生は学歴計全年齢の平均賃金,大学生は大卒の平均賃金を基礎収入にするということであまり問題はありません。

小学生,中学生,高校生の場合には,一般的には学歴計全年齢の平均賃金を基礎収入にすることが多いと思いますが,被害者が大学に進学することが明らかだった場合には,大卒の平均賃金を基礎収入にすることとも可能です。ただし,後で説明する労働能力喪失期間の就労開始年齢が,学歴計全年齢の平均賃金を基礎収入とする場合は18歳となりますが,大卒の平均賃金を基礎収入とする場合は22歳となるので,その点は注意が必要です。

生活費控除率

被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合40%
被害者が一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合30%
女性(主婦、独身、幼児等含む)30%
男性(独身、幼児等含む)50%
年金部分30%~50%

被害者が学生の場合,基本的には独身の方が多いと思いますので,上の表でいうと,男性であれば50%,女性であれば30%になります。ただし,上の表の女性の生活費控除率は,基礎収入を賃金センサスの女性学歴計全年齢の平均賃金とすることを前提としていると考えられます。民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)には,以下のような説明があります。

「なお,女子年少者の逸失利益につき,全労働者(男女計)の全年齢平均賃金を基礎収入とする場合には,その生活費控除率を40%~45%とするものが多い」(「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」)

そうすると,女子の年少者(小学生くらい)の場合,基礎収入を全労働者(男女計)学歴計全年齢の平均賃金を使うのであれば,生活費控除率は40%から45%になる可能性が高そうです。

労働能力喪失期間(ライプニッツ係数)

学生の場合,まだ就労を開始していませんので,労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数が少し複雑になります。

学生の場合のライプニッツ係数は,①まず,事故当時の年齢から67歳までの期間に対応するライプニッツ係数を出します。②次に,事故当時の年齢から実際に働き始めるまでの年齢の期間に対応するライプニッツ係数を出します。③①から②を差し引いた出された数値を労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数とします。

このように書くと全く分からないので,具体例で説明したいと思います。

事故当時10歳の子供が18歳から働き始めることを前提とした場合

①67歳-10歳=57年 57年に対応するライプニッツ係数 27.1509

②18歳-10歳=8年 8年に対応するライプニッツ係数 7.0197

③27.1509-7.0197=20.1312

この場合,20.1312を労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数とすることになります。

なお,ライプニッツ係数は,民法改正前は,民法の法定利率と同じく年5%で中間利息を控除する数値になっていましたが,現時点では年3%で中間利息を控除する数値になっていますので,それに合わせてライプニッツ係数の修正を行いました。ライプニッツ係数の数値は、今後も変更になるので注意が必要です。

事故当時12歳の男子小学生で18歳から働き始めることを前提とした場合の逸失利益は約6000万円

基礎収入は,18歳から働き始めることが前提ですので,令和元年の賃金センサスの男性学歴計全年齢の平均賃金560万9700円となります(賃金センサスは年度によって金額が変わりますのでご注意ください)。

生活費控除率は男子ですので50%になります。

さあ,一番複雑な労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数です。以下のとおりとなります。

①67歳-12歳=55年 55年に対応するライプニッツ係数 26.7744

②18歳-12歳=6年 6年に対応するライプニッツ係数 5.4172

③26.7744-5.4172=21.3572

そうすると,この場合の逸失利益の計算は以下の計算式のとおりとなります。

560万9700円×(1-50%)×21.3572=5990万3742円

事故当時20歳の女子大学生で大学卒業後から働き始めることを前提とした場合の逸失利益は7000万円以上

基礎収入は,女子大学生ですので,令和元年の賃金センサスの女性大卒全年齢の平均賃金472万400円となります。

生活費控除率は,先ほど説明したように独身女性の生活費控除率はは30%になります。

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数は以下のとおりになります。

①67歳-20歳=47年 47年に対応するライプニッツ係数 25.0247

②22歳-20歳=2年 2年に対応するライプニッツ係数 1.9135

③25.0247-1.9135=23.1112

大学生の場合,卒業時の年齢(通常22歳)から就労開始となりますのでこのような計算になります。

そうすると,この場合の逸失利益の計算は以下の計算式のとおりとなります。

472万400円×(1-30%)×23.1112=7366万5875円

実際にどれくらいに賠償金になるのかは弁護士に相談しよう!

実際にどれくらいの賠償金になるのかは、それぞれの事情によって違ってきますので、弁護士に相談しましょう!

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疼痛以外の感覚障害とは?

今回はかなりマイナーな後遺障害の話になります。私が以前担当した交通事故で「疼痛以外の感覚障害」という後遺障害が認定されたという事案がありました。

疼痛以外の感覚障害とは,疼痛はないけど蟻走感や感覚脱失等の感覚異常が残ってしまった障害をいいます。ちなみに,私が担当した被害者の方は,多少違和感があるくらいで,常時気になるようなことはないと言っていました。

疼痛以外の感覚障害は,単に感覚異常が残っただけでは認められずその範囲が広い場合に後遺障害として認定されます。ただし,労災や自賠責の基準では,どの程度の範囲に感覚異常が残れば,「範囲が広い」に該当するのかは明確にされていません。

疼痛以外の感覚障害の後遺障害等級は14級しかなく,そのほかの神経症状の後遺障害のように他覚的所見があったとしても12級は認定されません。というか,おそらく,疼痛以外の感覚障害の後遺障害は,他覚的所見がある場合にしか認められないと思います。

私が担当した事件でも,こめかみ辺りから3つに分かれている三叉神経のうち第三枝の損傷が画像によって確認することができるという事案でした。

疼痛以外の感覚障害による労働能力の喪失はあるか?

疼痛以外の感覚障害は,先ほど説明したように後遺障害等級は14級しかなく,認定の基準も労働能力とは無関係な感覚異常の範囲が広いかどうかというものだったので,この事案を担当することになった時には,感覚障害による労働能力の喪失が認められるのかという疑問を持ちました。

このような疑問がありましたが,むちうちによる14級の後遺障害でも労働能力の喪失が認められるのだから,疼痛以外の感覚障害にも労働能力の喪失は認められるだろうとそれほど大きな問題とは考えていませんでした。それどころか,三叉神経損傷が画像によって確認でき他覚的所見があるのだから,14級でも労働能力喪失期間は10年にはなると考えていたくらいです。

また,示談交渉の段階では労働能力喪失期間に争いはありましたが,保険会社は逸失利益が認められないという争い方はしなかったので,それほど労働能力の喪失の有無については気にしていませんでした。

裁判になったら労働能力喪失の有無を争ってきた!

この事案は,結局,示談では解決できず,交通事故紛争処理センターへの申立てをしました。過失がある事案だったのですが,当方は,最低でも自賠責保険金75万円を除いて350万円以上の賠償金を主張し,相手方は,200万円程度の賠償金までしか応じられないという回答でした。そのため,交通事故紛争処理センターでも示談することができず,裁判に移行することになりました。

交通事故紛争処理センターの時点で,加害者側には弁護士がついていたのですが,交通事故紛争処理センターでは労働能力の喪失の有無を争わなかったにもかかわらず,裁判になったら労働能力の喪失の有無を争ってきました。

しかも,相手方弁護士が労働能力の喪失が認められないと主張する理由の1つに,感覚障害が残った部位が唇からアゴにかけてであったため,歯牙障害と同じようなものだという理由があったのです。

歯牙障害とは,事故によって歯が喪失や欠損して歯科補綴をした場合に認められる後遺障害なのですが,一般的に労働能力の喪失は認められません。

労働能力の喪失が認められた!

相手方弁護士は,三叉神経損傷による感覚異常はこの歯牙障害と同じだという主張を裁判になって初めてしてきたのです。この主張は盲点だったので多少ドキッとしました。確かに,残っている症状は多少違和感があるくらいで,普通に仕事をしていたので,歯牙障害と同じようなものと裁判所に思われてしまうのではないかと思ったからです。

しかし,歯牙障害と同じ口の障害には,「言語機能の障害」というものがあります。「言語機能の障害」とは,発音不能の語音がある場合に認定される後遺障害なのですが,これは,コミュニケーションに支障が生じるために問題なく労働能力の喪失が認められる後遺障害です。

そこで,歯牙障害ではなく言語機能の障害に近いと裁判所に思わせれば,裁判所は労働能力の喪失を認めるのではないかと考え,そのような主張をしました。つまり,唇からアゴにかけての感覚障害によって事故前に比べて会話がしづらくなっておりコミュニケーションに支障が生じているという主張をしたのです。

この作戦がうまくいったのかは分かりませんが,裁判所が出した和解案では,感覚異常の後遺障害による労働能力の喪失が認められました。しかも,労働能力喪失期間は5年ではなく10年となりました(ちなみにトータルの賠償金は自賠責を除いて450万円となりました)。

どの部位に疼痛以外の感覚障害が残っても労働能力の喪失が認められるか?

今回は,唇からアゴにかけての感覚障害だったので,コミュニケーションに支障があるという主張ができましたが,ほかの部位に感覚障害が残った場合にも労働能力の喪失は認められるでしょうか?

おそらく上腕部や前腕部,大腿部や下腿部,胸部や臀部など体の動きとあまり関係のない部位に感覚障害が残ったとしても,労働に支障が生じるケースは少ないと思うので,労働能力の喪失は認められないような気がします。

残りの賠償金は慰謝料だけではないですよ!

ヤフーの検索エンジンに「交通事故」と入力すると,最上位の第2検索ワードが「慰謝料」となっています。実際に,交通事故に関係するキーワードで「交通事故 慰謝料」の検索ボリュームはかなり大きいようです。

ここでふと思ったことが,「交通事故」の最上位の第2検索ワードが,なぜ「賠償金」じゃないのだろうかってことです。弁護士の感覚ですと,交通事故の最上位の第2検索ワードは「慰謝料」よりも「賠償金」の方がしっくりきます。

「慰謝料」は,交通事故の賠償実務では,入通院慰謝料(傷害慰謝料)と後遺障害慰謝料がありますが,あくまでも賠償金を構成する損害項目の1つに過ぎません。交通事故の被害に遭ったら,慰謝料がいくらになるのか,ということ以上に,賠償金が総額でいくらになるのかということの方が気になります。

ここで再びふと思ったのですが,もしかしたら交通事故の被害に遭った人の多くが,治療費休業損害などは保険会社からすでに支払ってもらったので,残りの賠償金は慰謝料だ!と考えて,「交通事故 慰謝料」と検索しているのかもしれないということです。

確かに,交通事故の相談を受けていると「私の場合,慰謝料はいくらになりますか」と聞かれることが度々あります。この相談者の方が,慰謝料以外に損害項目があることを理解して質問しているとは思えなかったので,「慰謝料以外にも賠償金はもらえますよ」と答えると,大抵,「えっ」という反応をされます。

このような反応をされる方は,治療費や休業損害などはすでに保険会社から支払われているので,残りの賠償金は慰謝料しかないと考えている方ばかりでした。

念のために言っておきますが,治療費や休業損害などが支払われていても,残りの賠償金は慰謝料だけではありません。

慰謝料も重要ですが逸失利益も重要ですよ!

治療費や休業損害などが支払われていた場合,残りの賠償金は,慰謝料と逸失利益です。もちろん,慰謝料も重要ですが,逸失利益はもっと重要です。
慰謝料は入通院期間や後遺障害等級によって決まってきますので,同じ入通院期間や後遺障害等級であれば,慰謝料の金額は同じになります。
一方,逸失利益は,同じ後遺障害等級であっても,収入と年齢によって金額が大きく変わってきます。収入が高く,年齢が若ければ,逸失利益は慰謝料よりも高額になることが多くあります。

例えば,年収1000万円で40歳の男性と年収500万円で50歳の男性で,いずれも後遺障害等級が9級の場合に,逸失利益がどれくらいの金額になるか確認してみましょう。

ちなみに,後遺障害9級の後遺障害慰謝料は弁護士基準で690万円で,40歳の方も50歳の方も違いはありません。

まず,年収1000万円で40歳の方の逸失利益は以下のとおりの金額となります。
1000万円×35%×14.6430=5125万500円

次に,年収500万円で50歳の方の逸失利益は以下のとおりの金額になります。
500万円×35%×11.2741=1972万9675円

いずれのケースでも後遺障害9級の後遺障害慰謝料690万円を大きく上回っています。
また,年収1000万円の40歳男性の逸失利益は,年収500万円の50歳男性に比べると,3000万円以上も高額です。後遺障害等級が同じでも,収入が高く,年齢が若いほど逸失利益が高額になるということをお分かりいただけたと思います。

保険会社は慰謝料もそうだけど逸失利益をもっと低く提示してくる

保険会社は,慰謝料も逸失利益も弁護士基準を大きく下回る金額で提示してきますが,保険会社としては,逸失利益を低い金額で抑えられた方が会社の利益になります。
そうすると,逸失利益は低い金額のまま据え置きで,慰謝料を増額して被害者の方を納得させて示談させるということが多くあります。
被害者の方としては,慰謝料ばかりに目を向けず逸失利益が弁護士基準で計算された金額になっているかということも確認する必要があります。

逸失利益は、基本的には事故前年の年収を基準にして計算しますが、事故当時20代の被害者の場合には、賃金センサスを基準に計算することもあります。被害者の属性によって計算方法に違いがあるので弁護士に相談することをお勧めします。

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死亡事故の逸失利益はどうやって計算するの?

逸失利益とは,将来生きていれば得られたはずの収入を填補するという損害項目です。 死亡事故の逸失利益は,賠償金の大部分を占めますのでどのように計算をするかをしっかりと理解しておく必要があります。死亡事故の逸失利益は以下の計算式で計算をします。 基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 死亡事故一般については,「死亡事故で知っておくべき知識」をご覧ください。

主婦も逸失利益は認められる!

基礎収入は,会社員の場合には交通事故に遭った前年の年収を基準としますが(「死亡事故の逸失利益(会社員の場合)」をご覧ください。),専業主婦の場合,収入がありませんので逸失利益は認められないということになってしまうのでしょうか? それではあまりにも専業主婦の方の家事労働を軽視しすぎですので,収入がないからと言って逸失利益が認められないということは断じてありません! むしろ,専業主婦の方が家事をしっかりとしてくれていることで,旦那さんが仕事に専念できていますので,当然,専業主婦の方の家事労働も対価性が認められます。 では,専業主婦の方の収入はどのように決められるのでしょうか? 専業主婦など収入のない方の場合,毎年,厚生労働省が発表している賃金統計を使います。この賃金統計を「賃金センサス」といいます。省略して「賃セ」といったりします。 専業主婦の方の場合は,、「賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢」の平均賃金を基礎収入にします。 ちなみに,令和元年の賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢の平均賃金は,388万100円になります。賃金センサスは毎年発表されて基本的には金額も変動していますので,いつの年の賃金センサスを使うのかについては注意する必要があります。 また,最近は,専業主婦の方よりも正社員だったり,パートだったり仕事を持たれている女性も多くなっています。このような兼業主婦(言い方が古くてすみません。もっといい言い方ないですかね?)の方の場合,基礎収入は,仕事から得ている収入と賃金センサスのいずれを利用することになるのでしょうか? 兼業主婦の方の場合,事故前年の年収と賃金センサスの平均賃金を比較して高額な方を基礎収入とします。パートの方ですと,ほとんどのケースで賃金センサスの平均賃金の方が高額になります。そのため,保険会社は,賃金センサスの平均賃金を基礎収入とせずに事故前年の年収を基礎収入として逸失利益の計算をすることがありますので注意しましょう。 主婦の方の生活費控除率は以下の表のとおり30%になります。
被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合40%
被害者が一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合30%
女性(主婦、独身、幼児等含む)30%
男性(独身、幼児等含む)50%
年金部分30%~50%
労働能力喪失期間は事故当時の年齢から67歳までの期間になります。ただし,高齢で67歳までの期間が平均余命の2分の1よりも短い場合には,平均余命の2分の1が労働能力喪失期間になります。 ライプニッツ係数は労働能力喪失期間によって変わりますので具体的な事例の中で見ていきましょう。また,ライプニッツ係数は,以前は,民法の法定利率と同じく年5%で中間利息を控除する数値でしたが,現在は,年3%で中間利息を控除する数値になっていますので、以下の例では年3%で中間利息控除をする前提のライプニッツ係数の数値で計算しています。

事故当時40歳で子供2人を持つ専業主婦の逸失利益は5000万円近くになります

基礎収入は,事故の年によって違ってくるのですが,ひとまずここでは先ほど例で挙げた平成27年の賃金センサスの平均賃金372万7100円とします。 生活費控除率は,男性の場合,扶養家族の人数によって生活費控除率が変わってきましたが,専業主婦の方の場合は基本的には被扶養者になりますので,子供がいても生活費控除率が30%から変わることはありません。 労働能力喪失期間は67歳までの27年になります。27年に対応するライプニッツ係数は18.3270になります。 そうすると,この場合の逸失利益は以下の計算式のとおりとなります。 388万100円×(1-30%)×18.3270=4977万7414円

事故当時25歳の兼業主婦(大卒)で事故前年の年収が400万円で子供がいない女性の逸失利益は7800万円以上になります

この場合,基礎収入は応用問題になります。先ほど,兼業主婦の場合は,事故前年の年収と賃金センサスの平均賃金を比較してのいずれか高額の方を基礎収入にすると説明をしました。 そうすると,事故前年の収入400万円と令和元年の賃金センサスの平均賃金372万7100円を比較すると事故前年の年収400万円の方が高額なので,基礎収入は400万円になりそうです。 しかし,事案をよく見ていただくとこの方は「25歳」の「大卒」となっています。 30歳未満の若年労働者の方の場合には賃金センサスのうち全年齢の平均賃金を使うのですが,25歳の大卒の場合は,女子大卒全年齢の平均賃金を使うことになります。 令和元年の賃金センサスの女子大卒全年齢の平均賃金は472万400円になります。 そうすると,この場合は事故前年の年収よりも全労働者全年齢の賃金センサスの方が高いということになるので,基礎収入は472万400円になります。 生活費控除率は女性なので30%になます。 労働能力喪失期間は67歳までの42年となり,42年に対応するライプニッツ係数は23.7014になります。 そうすると,この場合の逸失利益は以下の計算式のとおりとなります。 472万400円×(1-30%)×23.7014=7831万6061円

民法改正によって中間利息控除をするための年利が変更になったことによって逸失利益が民法改正前(2020年3月31日以前)よりも高額になる!

2020年4月1日に民法が改正されて、法定利率がそれまでの年5%から現状は3%に変更になりました(今後、法定利率は3年ごとに見直しされます。)。 これに合わせて中間利息控除の利率も現状3%に変更になったため、中間利息として控除される金額が民法改正前(2020年3月31日)に比べて少なくなりました。 中間利息として控除される金額が少なくなったということは、その分、逸失利益が高額になるということです。 2020年4月1日以降に発生した交通事故については、改正後の民法が適用されますので、逸失利益の計算をしっかりとしましょう。 亡くなった被害者の大事な賠償金ですので、逸失利益を含めて賠償金が総額でいくらになるのかはしっかりと確認した上で解決するようにしましょう。

実際にどれくらいの逸失利益、賠償金になるのかは弁護士に相談しよう!

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