クロノス総合法律事務所 神奈川県弁護士会所属

交通事故 賠償・補償の豆知識交通事故で労災保険から休業補償をもらっていた場合に気を付けること

公開日:
2017.08.11
更新日:
2026.06.17
休業損害 労災事故 損益相殺

交通事故で労災保険から支給される休業補償の内容

交通事故で労災保険を利用できる場合,仕事を休んだら労災保険から休業補償の給付があります。労災保険の休業補償は,給付基礎日額の60%に相当する金額しか給付されません。労災保険の休業補償が給付基礎日額の60%しか給付されないのは,労働基準法の休業補償が給付基礎日額の60%なんですが,これに準じているためです。

この給付基礎日額の60%の休業給付以外に,社会復帰促進事業等の一環として支払われる休業特別支給金というものが給付されます。休業特別支給金は,給付基礎日額の20%が給付されるものですが,福祉給付の性質を有しているので,休業給付そのものとは性質が多少異なります。

とはいえ,休業給付と特別支給金を合計すると,給付基礎日額の80%に相当する金額の給付があるということになります。

休業特別支給金は賠償金から控除されない

労災保険の休業補償は,交通事故の賠償における休業損害と同質性があります。また,労働者災害補償保険法で国が労災保険給付を行った場合,被害者が加害者に対して有している損害賠償請求権のうち労災給付した金額に相当する分については国に移転すると規定されています。

このことから,労災保険の休業補償は,交通事故の賠償における休業損害から控除されることになります(「交通事故で労災保険金を受け取っている場合の控除について」参照)。

ただし,休業特別支給金は,先ほど説明したように休業給付とは異なり福祉給付の性質を有しているものなので,交通事故の賠償における休業損害と同質性がありません。また,労働者災害補償保険法は,国が休業特別支給金を給付したことによる損害賠償請求権の移転を規定していません。

以上のことから,休業特別支給金は交通事故の賠償における休業損害から控除されることはありません。

そうすると,交通事故の賠償における休業損害から労災保険の休業給付の60%だけを控除すればいいので,残りの40%の休業損害は加害者に対して賠償金として請求できることになります。

これまで,保険会社が労災保険の休業特別支給金の分まで賠償金から控除してきたという経験はありませんので,大丈夫だとは思いますが,保険会社から賠償金の提示があったら,念のために,休業特別支給金まで控除した内容になっていないか確認するようにして下さい。

給付基礎日額は歴日数で計算されている

給付基礎日額とは,簡単に行ってしまうと1日当たりの給与額になります。労災保険の場合,給付基礎日額は,事故前3ヶ月の基本賃金+手当の合計金額を歴日数(だいたい90日)で割った金額となっています。

歴日数とは,土日も含めたカレンダーの日数です。

そうすると,歴日数は,通常,休日となる土日も含めた日数なので,実際に稼働した日数(稼働日数)で割った場合よりも,1日当たりの給与額が小さい金額になってしまいます。労災の場合,休業日数に土日も含まれますので,このような計算でも問題はありません。

一方,交通事故の賠償における休業損害は,通常は,土日を除いた実際に休んだ日だけを休業日数としますので,労災保険と同じ歴日数で日額を計算すると,休業日数に土日が含まれない分,損するということになってしまいます。

このような損を避けるために,交通事故の賠償における休業損害の1日当たりの給与額は,実際に稼働した稼働日数で計算する必要があります。

労災保険の休業補償には免責期間がある

労災保険の休業補償は,最初の休業日から3日間は免責期間になります。つまり,最初の休業日を含めて3日は,休業補償は給付されないということです。

そうすると,交通事故の賠償における休業損害を請求する場合には,労災保険の免責期間の3日分も含めて計算する必要があるということに注意が必要です。

過失相殺の方法

交通事故の発生に被害者にも過失があった場合,賠償金は損害額から過失相殺による控除をした金額となります。

被害者の過失が大きくて,過失相殺をした結果,賠償の休業損害よりも労災保険の休業補償の方が高額になってしまうということがあります。

しかし,このような場合でも,労災保険の休業補償はほかの損害項目から控除されることはありません。

例えば,労災保険から60万円の休業補償を受け,交通事故の賠償における休業損害が100万円だったとします。この場合,過失相殺がなければ,100万円-60万円=40万円が休業損害として支払われる金額になります。

この例で,被害者に50%の過失があったとします。

そうすると,100万円×(1-50%)=50万円(休業損害)

50万円(休業損害)-60万円(労災保険の休業補償)=-10万円

このように,被害者に50%の過失があった場合,10万円ほど労災保険の休業補償が払い過ぎということになってしまいます。

ところが,この10万円は,ほかの慰謝料などの損害項目から差し引かれることはありません。

これは,労災保険給付は同質性を有する損害項目からしか控除できないという性質を持っていることによるものです。

つまり,労災保険の休業補償は,賠償における休業損害と同質性がありますが,慰謝料とは同質性がないため,慰謝料から控除することはできないということになります。

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弁護士 竹若暢彦

弁護士 竹若暢彦

クロノス総合法律事務所の代表弁護士の竹若暢彦です。当事務所は、交通事故の被害者側専門の法律事務所です。多数の交通事故の被害者側の解決実績がありますので、交通事故の被害にお悩みの方は一度ご相談ください。

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