クロノス総合法律事務所 神奈川県弁護士会所属

交通事故 賠償・補償の豆知識酔っぱらって道路に寝てる人が交通事故に遭ったら自賠責だけ?

公開日:
2026.07.24
更新日:
2026.07.24
交通死亡事故 歩行者の交通事故 過失割合
酔っぱらって道路に寝てる人が交通事故に遭ったら自賠責だけ?

年末は酔っぱらって道路に寝ている人が車に轢かれる交通事故が多くなる

年末になると職場の忘年会などでお酒を飲む機会が多くなります。ほどほどに飲むのであればいいですが,飲みすぎてしまうと終電で乗り過ごしてしまって無駄なタクシー代を使ったり,帰れなくてホテルに泊まったりすることもあるので,お酒の飲みすぎには気を付けたいですね。

 タクシーを使ったり,ホテルに泊まったりして無駄なお金を使ってしまっただけなら笑い話になりますが,酔っぱらって道路に寝てしまって車に轢かれてお金よりも大事な体や命を失ってしまったら笑えません。

でも,年末になると酔っぱらって道路に寝てしまって,車に轢かれてしまい大怪我をしたり,命を落としてしまう人が多くいらっしゃいます。

 先ほど見ていたニュースでも忘年会の帰りに酔っぱらって道路に寝てしまい車に轢かれて亡くなってしまったというニュースが流れていました。

当然,こんなことで亡くなってしまったご本人もやるせないですが,ご家族はもっとやるせない気持ちになるので,酔っぱらって道路に寝てしまうことだけは絶対に止めましょう。

しかし,実はこの「路上寝込み事故」が多くなるのは年末の冬の時期だけではありません。

気候が暖かくなる夏場にかけても,お酒を飲んだ後に暑さから逃れるために外の風に当たり,そのまま路上で涼みながら寝込んでしまうケースが急増するのです。

季節を問わず,酔っぱらって道路に寝てしまうことだけは絶対に止めましょう。

では,なぜ運転手は道路で寝ている人を轢いてしまうのでしょうか。

運転手は前や対向車,歩道を歩く人には注意を払っていますが,「まさか道路の真ん中に人が寝ているはずがない」と思い込んでしまっています。
これを心理学で「正常性バイアス」といいます。

夜間にロービーム(照射範囲約40メートル)で走っていると,道路に寝ている人に気付いた時にはもうブレーキが間に合いません。

対向車や先行車がいない時は,積極的にハイビーム(上向きライト,照射範囲約100メートル)を活用して,遠くまで見えるようにしておくことが事故を防ぐためにとても大切です。

酔っ払って道路に寝る行為は「道路交通法違反」に該当する

そもそも,酔っぱらって道路に寝る行為は,マナー違反というだけでなく,明確な「法律違反」であることをご存じでしょうか?

道路交通法第76条では,道路で酒に酔って交通の妨害となるようにふらついたり,道路で寝そべったりすることを厳しく禁止しています。

これに違反すると,5万円以下の罰金に処されるという罰則規定まである立派な犯罪行為なのです。

だからこそ,この後で説明するように,交通事故になってしまった場合の「過失割合」において,歩行者側にも厳しい判断が下されることになります。

酔っぱらって道路に寝ていた人を轢いてしまった運転手にも民事上の責任は認められます!

 酔っぱらって道路に寝ていた人を轢いてしまった運転手の責任はどうなるのでしょうか?

酔っぱらって寝ていた方が悪いのだから運転手が刑罰に問われることはないのでしょうか?

また,民事上も酔っぱらって寝ていた方が悪いのだから運転手が賠償責任を負うことはないのでしょうか?

 酔っぱらって寝ている人を見落として轢いてしまった運転手にも過失がありますので,刑事では過失運転致死傷罪の責任が問われる可能性があります。

ただし,例外もあります。

「夜間で街灯が全くない暗い道路」「見通しの悪いカーブの直後」「被害者が黒っぽい服を着て路面にぴったりと寝ていた」といった,どうやって急ブレーキを踏んでも物理的に回避できなかったことが証明された極めて例外的なケースでは,刑事裁判で「回避不能」として不起訴や無罪になったりすることもあります。

一方,民事では,やはり運転手にも過失がありますので,事故の責任が認められ賠償責任を負うことになります。

ちなみに,人身事故の場合,自動車損害賠償保障法(自賠法)3条で,運行供用者(運転手や自動車の所有者など)が自動車の運転によって他人の生命,身体に損害を負わせた場合,原則として,運行供用者が事故の責任を負うとされています。

そのため、よほどのことがない限り,酔っぱらっている人を轢いた運転手の民事上の責任が否定されることはありません。

酔っぱらって道路に寝て事故に遭って死亡しても自賠責3000万円以上の賠償金がみとめられる可能性があります!

 酔っぱらって道路に寝ていたところ轢かれて死亡してしまった場合でも賠償金はもらえるのですが,保険会社からは3000万円以下の金額しか提示されないこと多くあります。

3000万円という金額は,死亡事故で自賠責保険から支払われる限度額です。

つまり,保険会社は,自賠責保険の限度額までの提示しかしていないので,自社の負担なく賠償金を支払ったことにできます。

ひどい保険会社や共済だと,自賠責保険の請求書だけ送ってきておしまいにするようなところもあります。

 死亡した被害者の家族も「酔っぱらって寝ていたオヤジが悪いんだし」なんて考えて,保険会社の提示する金額で示談してしまうということが多くあるようです。

確かに,酔っぱらって寝ていたお父さん(お父さんとは限りませんが…)に悪いところもあったかもしれませんが,よく考えてみてください。

酔っぱらって寝ていた人はあくまでも歩行者です。

 ここで思い出してもらいたいのは,歩行者と自動車の交通事故の場合,基本的には自動車の方が責任は大きいということです。

あまりないかもしれませんが,酔っぱらって日中に道路に寝ていて自動車に轢かれてしまった場合,歩行者の過失は30%で,運転手の過失は70%になります。

夜間の場合であっても,歩行者の過失も運転手の過失も50%です。

 仮に夜間に酔っぱらって道路に寝ていたところを轢かれて死亡してしまったとして,被害者の損害額の総額が8000万円であったというケースで見てみましょう。

賠償金は単純計算で8000万円×50%=4000万円になります。

そうすると,死亡事故の自賠責保険の限度額である3000万円よりも1000万円ほど高くなります。

それにもかかわらず,保険会社が提示した3000万円の賠償金で示談してしまった場合,1000万円も損することになってしまいます。

死亡事故の場合,仕事をしていた方であれば,損害額は7000万円から9000万円程度になることが多いので,酔っぱらって道路に寝ていたところを轢かれて死亡してしまったという交通事故の場合でも,過失相殺をされたとしても自賠責保険の限度額である3000万円以上の賠償金を得られるというケースが多くあります。

このような事故でも,「酔っぱらって寝ていたオヤジが悪いんだし」なんて考えずに(お父さんとは限りませんが…),弁護士に相談をしてみてください。

ちなみに,もし,被害者が自動車保険に入っていた場合には,過失相殺によって減額された被害者の過失分も保険金として請求できる場合があるので,交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。

クロノス総合法律事務所では被害者の過失が大きい交通事故の相談も受け付けておりますのでお問い合わせください。

まとめ

 それでは,酔っぱらって道路に寝ていたところ轢かれてしまったという交通事故についてまとめます。

 ①運転手は刑事上も民事上も責任を負う可能性がある(民事の場合は自賠法3条があるのでほとんどのケースで賠償責任を負います)

 ②酔っぱらって道路に寝ていたところ轢かれてしまった被害者でも賠償金はもらえる

 ③被害者の過失は夜間の道路に寝ていた場合でも50%程度

 ④賠償金は自賠責保険金の限度額3000万円以上になる可能性が高い

ご参考にしていただければと思います。

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弁護士 竹若暢彦

弁護士 竹若暢彦

クロノス総合法律事務所の代表弁護士の竹若暢彦です。当事務所は、交通事故の被害者側専門の法律事務所です。多数の交通事故の被害者側の解決実績がありますので、交通事故の被害にお悩みの方は一度ご相談ください。

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