クロノス総合法律事務所 神奈川県弁護士会所属

交通事故 賠償・補償の豆知識怪我をしているのに物損事故で処理してしまうことのデメリット

公開日:
2026.10.26
更新日:
2026.10.26
交通事故 慰謝料増額 過失割合
怪我をしているのに物損事故で処理してしまうことのデメリット

警察や保険会社から物損事故で処理したいと言われても断ろう!

交通事故に遭うと交通事故証明書が発行されます。

この交通事故証明書には,「人身事故」もしくは「物損事故」と事故の種類が記載されるのですが,被害者が事故の怪我で通院をして治療を受けているにもかかわらず,交通事故証明書に「物損事故」と記載されているケースがあります。

通常は,医師が作成した診断書を警察に提出すれば,人身事故として処理されるのですが,警察や保険会社が物損事故で処理したいと言って物損事故扱いになってしまうことがあるようです。

交通事故の被害者から相談を受けると,必ず交通事故証明書で人身事故になっているかを確認するのですが,物損事故になっている場合には,被害者になぜ人身事故扱いにしなかったのか確認をします。

そうすると,相談者は,「警察から物損事故で処理したいと言われた」,もしくは,「保険会社の担当者から治療費は支払うから物損事故として処理してほしいと頼まれた」と回答します。

被害者は,警察や保険会社の担当者から物損事故にして欲しいと頼まれて善意で人身事故にせず物損事故にしているのですが,警察や保険会社の担当者は被害者のことは一切考えず自分たちのことしか考えずに物損事故にして欲しいとと言っているので注意が必要です。

人身事故の場合,警察は,事故現場などの実況見分(いわゆる現場検証)をして,その結果を記録した実況見分調書を作成します。

また,加害者と被害者から事情を聴取して,それぞれの供述調書を作成します。

実況見分調書や供述調書など交通事故の証拠がそろったら,事件を検察官に送致して,交通事故の加害者の刑事処分を検察官に図ることになります。

一方,物損事故の場合,警察は実況見分調書を作る必要も,供述調書を作る必要もなく,物件事故報告書を作成するだけで,検察官に送致もすることなく事件の処理が終了となります。

もうお判りでしょうが,警察官が物損事故で処理をしたいというのは,事件処理を簡単に終わらすためです。被害者のことなど全く考えてません。

また,保険会社の担当者が物損事故として処理して欲しいというのは,当然,物損事故で処理できれば保険会社の支払いを少なくできるからです。

以下では,怪我をしているのに物損事故で処理をしてしまうとどのようなデメリットがあるかについてみていきたいと思います。

クロノス総合法律事務所では物損事故から人身事故への切り替えもアドバイスできますのでご相談ください!

保険会社が早期に治療費の支払いを打ち切る可能性が高くなる

怪我をしているのに物損事故として処理してしまうケースというのは,むちうちのケースが多いと思います。むちうちは,事故直後はほとんど症状がなかったとしても少し時間が経ってから色々な症状が出てくるということがあるので,思いのほか通院が長くなったりします。

ところが,物損事故で処理をしていると,保険会社は,自賠責の120万円の範囲で解決をしようとするので,治療費が120万円を超える前に治療費の支払いの打ち切りを通告してきます。

保険会社は,人身事故の場合でも早期の治療費の打ち切りはあるのですが,物損事故ではほぼ間違いなく早期で治療費の支払いを打ち切り,長期間の通院を認めることはありません。

物損事故で処理してしまうと,保険会社が治療費の支払いを早期に打ち切る可能性が高くなります。

なお、保険会社が治療費の打ち切りを打診してくる時期には、怪我の種類によって以下のような目安があります。

怪我の種類治療費打ち切りの目安時期
打撲1カ月程度
症状の軽いむちうち3カ月程度
症状の重いむちうち6カ月程度
骨折3カ月〜1年程度

また、初診時に病院で書いてもらう診断書に「加療期間2週間」と記載されることがよくありますが、これはあくまで初期診断の目安に過ぎません。

2週間で治療を強制的に終了しなければならないという意味ではありませんので、症状が続く場合は医師の判断のもと、安心して通院を継続してください。

後遺障害が非該当になる可能が高くなる

交通事故証明書で物損事故となっていた場合,後遺障害の被害者請求をするときには,後遺障害が非該当で返ってくることを覚悟します。

後遺障害の被害者請求をする際には,交通事故証明書を提出するのですが,物損事故の場合,人身事故に比べて明らかに自賠責からの回答が早いので,おそらく調査事務所では,交通事故証明書を確認して物損事故となっていたら,ほとんど調査をせずに非該当と判断して,自賠責に結果を返しているのではないかと思います。

当然,後遺障害が非該当であれば,後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料は認められませんので,保険会社の支払いは少なくなります。

被害者の収入にもよるのですが,後遺障害14級が認められた場合と,非該当の場合とでは,200万円くらいは賠償金の額が違ってきます。

頚椎捻挫と診断されたのに,知らずに善意で物損事故にしてしまうと,200万円の損をする可能性があるということです。

過失割合が不利になる可能性がある

通常,過失割合は交通事故の状況から判断することになります。

基本的には,交通事故の事故態様で当事者の過失割合は決まってくるのですが,当然,その事故特有の事情によって過失割合が変わってくることがあります。

例えば,加害車両が法定速度を超過していたとか,加害車両の運転手が携帯電話を利用していたというような事情です。

実況見分や当事者の事情聴取をしていれば,このような事実がはっきりすることが多いのですが,先ほども説明したように,物損事故として処理してしまった場合,警察は,実況見分や当事者の事情聴取を行いません。

そうすると,その事故特有の事情が分からずに,交通事故の事故態様だけで当事者の過失割合を判断しなければならなくなってしまいます。

もし,加害者の過失を増加する事情があったとしても,それが記録されていなければ,被害者がどんなに主張してもその事情が認められることはありません。

物損事故で処理してしまうと,詳しい事故の状況が判断できないので,被害者の過失割合が不利になってしまう可能性があります。

過失割合が不利になれば、受け取れる怪我の賠償金も大きく減額されてしまいます。

しかし、弁護士にご依頼いただければ、警察へ「人身事故への切り替え」を求めるサポートが可能です。

また、万が一切り替えが難しい場合でも、「自賠責保険への被害者請求」という手続きを使うことで、適正な補償を確保できるケースが存在します。

自賠責保険からの補償(怪我に対する補償)であれば、被害者の過失割合が7割未満なら過失相殺による減額を一切されずに受け取れるため、より手取り額が多くなる高度な解決方法をとることが可能です。

物損事故でも怪我をして通院していれば慰謝料は請求できる!

物損事故で処理してしまっても怪我をして通院していれば慰謝料を請求できます。

慰謝料は、通院期間や通院回数を基準に算定しますので、物損事故で処理してしまっても通院期間が長くなれば慰謝料もそれなりの金額になることがあります。

もちろん、先ほど説明したように物損事故だと治療費の早期の打ち切りの可能性が高くなるので、それほど長く通院することはできないかもしれませんが、それでも弁護士基準で慰謝料を計算した場合50万円から90万円程度になる可能性があります。

慰謝料の算定には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」という3つの異なる基準があり、どの基準を使うかで最終的な賠償額に数倍の開きが生じます。

自賠責基準における入通院慰謝料は、2020年(令和2年)4月1日以降に発生した事故については、1日あたり4,300円となっています。

しかし、これは国が定めた「最低限の補償額」に過ぎません。
加害者側の保険会社が提示する金額を鵜呑みにしてはいけません。

以下の表は、「月に10日(週2〜3回程度)」通院した場合をモデルとした、自賠責基準と弁護士に依頼した場合の「弁護士基準」の慰謝料相場の比較です。

なお、自賠責基準の慰謝料は、以下の計算式で算出されます。

■自賠責保険の慰謝料計算式
4,300円 ×【「実通院日数×2」と「通院期間」のうち、少ない方】

※例えば1ヶ月(30日)のうち10日通院した場合、「10日×2=20日」が採用され、4,300円×20日=8.6万円となります。これよりも通院日数が少ない場合は、自賠責基準の金額はさらに低くなります。

通院期間自賠責基準(月10日通院の場合)弁護士基準(軽傷の場合)弁護士基準(重傷の場合)
1ヶ月8.6万円19万円28万円
2ヶ月17.2万円36万円52万円
3ヶ月25.8万円53万円73万円
4ヶ月34.4万円67万円90万円
5ヶ月43.0万円79万円105万円

表を見てお分かりのとおり、弁護士が介入し適正な基準を用いることで賠償額が大幅に増額する可能性があります。

物損事故で処理してしまってもどれくらいの慰謝料が請求できるかは弁護士に相談した方がいいかもしれません。

まとめ

このように,怪我をしているのに物損事故として処理をしてしまうと,被害者に不利になってしまうことが多くあります。

もちろん,怪我をしていないのであれば物損事故で処理することは当然ですが,怪我をしているのに,警察や保険会社の担当者に気を使って,本来,人身事故扱いにすべき事故を物損事故扱いにすることは絶対にしてはいけません。

頚椎捻挫で加療期間1週間という診断であっても,怪我をしていることには間違いありません。医師が作成した診断書を警察に提出すれば,警察は面倒でも人身事故として処理することになりますので,軽くても怪我をした場合には人身事故として処理してもらい,後から失敗したと思うことがないようにしましょう。

また物損事故で処理してしまっても怪我をして通院しているのであれば、慰謝料を請求できる可能性がありますので、あきらめずに弁護士に相談してみましょう。

クロノス総合法律事務所では物損事故から人身事故への切り替えもアドバイスできますのでご相談ください!

弁護士 竹若暢彦

弁護士 竹若暢彦

クロノス総合法律事務所の代表弁護士の竹若暢彦です。当事務所は、交通事故の被害者側専門の法律事務所です。多数の交通事故の被害者側の解決実績がありますので、交通事故の被害にお悩みの方は一度ご相談ください。

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