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岡寛恵さんの交通事故から女優に外貌醜状が残った場合の逸失利益を考えてみる|【公式】横浜の交通事故に強い弁護士《クロノス総合法律事務所》

更新日:2023年10月10日

交通事故でフロントガラスが顔面に突き刺さった影響で女優を引退

先日,山の日で休日だったので久々にゴールデンタイムにテレビを見ていたところ,TBSの「爆報!THEフライデー」という番組で,岡寛恵さんという女優さんのことが取り上げられていました。

「爆報!THEフライデー」によると,女優の岡寛恵さんは,14歳の時に大林宣彦監督の「時をかける少女」で主演の原田知世さんの妹役を演じるなど,若いうちから女優として実績を残された方だったようです。

ところが,19歳の時に,対向車線を走っていた自動車が,岡寛恵さんが乗っていた自動車に衝突するという交通事故に遭い,その際に,岡寛恵さんは,フロントガラスに顔面を強打し,割れたフロントガラスが顔面に突き刺さり,顔面に無数の傷跡が残る怪我を負ったそうです。顔面の傷跡は20か所以上で,治療をしても傷跡が残ってしまったために,女優生命を絶たれ,19歳で女優を引退しなければならなくなったそうです。

ただ,現在は,顔面形成外科手術を受けて傷跡はほとんど消えて,女優や声優さんとして復帰されているそうです。

女優の外貌醜状の後遺障害

女優さんにとって顔に傷を負うというのは,職業的には致命傷といっていいと思います。ところが,自賠責では,職業的な違いを考慮することなく,決まった条件によって後遺障害の認定をすることになりますので,女優さんだからといって外貌醜状の後遺障害で1級になるというようなことはありません。

女優さんであっても,醜状の程度によって以下の7級から12級の後遺障害が認定されることになります。

後遺障害等級障害の程度醜状の程度
後遺障害7級外貌に著しい醜状を残すもの①頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含まない。)以上の瘢痕又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損
②顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没
③頚部にあっては、てのひら大以上の瘢痕
①から③が人目につく程度以上のもの
後遺障害9級外貌に相当程度の醜状を残すもの顔面部の長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの
後遺障害12級外貌に醜状を残すもの①頭部にあっては、鶏卵大以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
②顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線条痕
③頚部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕

岡寛恵さんの場合,顔面の傷跡が20か所以上ということだったので,この場合には,おそらく7級の後遺障害が認定されることになると思います。

女優の外貌醜状の逸失利益

外貌醜状は,後遺障害による逸失利益が認められるかということが問題となります。

外貌に醜状が残っても,労働能力が低下したわけではないから,後遺障害による逸失利益は認められないのではないかという問題意識です。

しかし,顔面に傷跡が残れば人前に出るような仕事や人と対面するような仕事の場合,労働能力に影響があることは間違いありません。ましてや,岡寛恵さんの場合は女優としての仕事ができなくなってしまったのですから外貌醜状による逸失利益が認められることは間違いありません。

後遺障害による逸失利益は

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

という計算式で計算をすることになるので,以下では,岡寛恵さんの交通事故で,労働能力喪失率,基礎収入,労働能力喪失期間がどのように判断されることになるのか考えてみたいと思います。

労働能力喪失率

通常,労働能力喪失率は,後遺障害等級ごとに決まっていて,例えば,7級の後遺障害であれば56%と定められています。

ところが,外貌醜状の後遺障害の場合,先ほど説明したように労働能力が低下したかどうかが問題になるので,逸失利益が認められる場合でも,後遺障害等級ごとに定められている通常の労働能力喪失率よりも下げられることが多くあります。

では,女優さんに外貌醜状が残った場合も同じように労働能力喪失率は下げられてしまうのでしょうか?

岡寛恵さんの場合,実際に女優として活躍し実績があったので,この事実はかなり重視する必要があると思います。

おそらく,実績のない女優さんの場合には,労働能力喪失期間のうち最初の10年くらいを等級どおりの労働能力喪失率として,それ以降を一定程度下げた労働能力喪失率を認定する可能性が高いと思います。

しかし,実績のある女優さんの場合,外貌醜状がなければ長い期間女優として活躍した可能性が高いので,労働能力の喪失の程度は大きいと評価されるように思います。

そうすると,岡寛恵さんの場合は,外貌醜状の後遺障害であったとしても,後遺障害等級どおりの労働能力喪失率が認められる可能性が高いのではないかと思います。

基礎収入

基礎収入は,基本的には事故前年の年収を基準とします。被害者の年齢が30歳未満の場合には,賃金センサスの平均賃金を基礎収入とすることもあります。

当時の19歳の女優さんの年収がどの程度の金額なのかは知りませんが,おそらく,高卒で一般的な仕事に就いた女性と比べると高い収入を得ていた可能性が高いと思います。

そうすると,基本的には,賃金センサスを使わずに事故前年の年収を基礎収入とする可能性が高いと思います。

ただし,女優さんのように毎年仕事によって収入が変わる仕事は,保険会社側から,就労可能年齢の67歳まで同じ年収が続く可能性は低いと反論されることがあります。

賃金センサスの平均賃金よりもはるかに高額な年収だった場合には,このような反論が認められる可能性もありますが,賃金センサスの平均賃金よりも100万円から200万円高い程度であれば,おそらく事故前年の年収を基礎収入とすることになるのではないかと思います。

可能性としては低いように思いますが,もし,事故前年の年収が賃金センサスの平均賃金よりも低い場合には,19歳と若年者であることから,賃金センサスの平均賃金が基礎収入となります。

労働能力喪失期間

通常,労働能力喪失期間は,症状固定時の年齢から67歳までの期間とします。仮に,症状固定時の年齢が事故から1年後の20歳であったのであれば,労働能力喪失期間は47年となります。

ところが,外貌醜状の後遺障害の場合,労働能力喪失率を下げ,さらに,労働能力喪失期間まで短くするという判断をされることがあります。

特に,主婦に外貌醜状の後遺障害が残ったようなケースでは,労働能力喪失率,労働能力喪失期間ともに通常のケースを下回るような内容になることが多くあります。

女優さんの場合,ほかの仕事に比べて,外貌醜状による労働能力喪失の程度が大きいことは間違いありませんし,定年のない仕事ですので,実績のある女優さんであれば,長い期間女優として仕事をすることになると思います。このような事情を考慮すれば,外貌醜状であっても,女優さんの場合には労働能力喪失期間は,就労可能年齢の67歳まで認められる可能性が高いのではないかと思います。

まとめ

外貌醜状の場合,後遺障害による逸失利益は必ずといっていいくらい争点になります。仕事が女優さんであれば尚更だと思います。

外貌醜状で後遺障害による逸失利益が認められるためには,外貌醜状により仕事上どのような影響が出る可能性があるのかということを詳しく主張する必要があります。仕事上どのような影響が出るかをしっかりと主張できなければ,外貌醜状の後遺障害による逸失利益は否定されてしまいますので,外貌醜状で保険会社から後遺障害による逸失利益を否定されている場合には,弁護士に相談することをお勧めします。

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