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上肢と下肢の関節機能障害が認定されるために必要な知識を解説!|【公式】横浜の交通事故に強い弁護士《クロノス総合法律事務所》

更新日:2023年10月10日

上肢及び下肢の関節機能障害

機能障害とは,一定程度以上関節の可動域が制限されている場合に認められる後遺障害です。労災や自賠責は以下の障害の程度に従って,上肢及び下肢の機能障害の後遺障害等級を定めています。

上肢の機能障害

後遺障害等級障害の程度
後遺障害1級両上肢の用を全廃したもの
後遺障害5級1上肢の用を全廃したもの
後遺障害6級1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
後遺障害8級1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
後遺障害10級1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
後遺障害12級1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

下肢の機能障害

後遺障害等級障害の程度
後遺障害1級両下肢の用を全廃したもの
後遺障害5級1下肢の用を全廃したもの
後遺障害6級1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
後遺障害8級1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
後遺障害10級1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
後遺障害12級1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

関節の機能に障害を残すもの

障害の程度が最も軽いのは「関節の機能に障害を残すもの」です。

「関節の機能に障害を残すもの」とは,関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限された場合をいいます。健側とは,怪我をしてない方の腕ないし足のことをいいます。

また,関節の動きには主要運動と参考運動があるのですが,後遺障害認定における関節の可動域は,基本的には関節の主要運動を評価の対象とします。

各関節の主要運動は以下のとおりです。

部位主要運動
肩関節屈曲,外転・内転
肘関節屈曲・伸展
手関節屈曲・伸展
股関節屈曲・伸展,外転・内転
膝関節屈曲・伸展
足関節屈曲・伸展

例えば,肩関節の主要運動は,屈曲と外転・内転の2つです。外転と内転は2つで1つの主要運動になります。

肩関節のように主要運動が2つある場合は,いずれか1つの主要運動が健側の可動域角度の4分3以下になっていれば「関節の機能に障害を残すもの」に該当することになります。

では,具体的な可動域角度で「関節の機能に障害を残すもの」に該当するのか見てみましょう。

左肩の腱板が断裂して屈曲(伸ばした腕を前方から上に向かってあげる動作)の可動域角度が120度までしか上がらなかったとします。屈曲が120度というのは,伸ばした腕が前方斜め上までしか上がらないという感じの状態です。

健側の右肩の屈曲の可動域角度は180度だったとします。これは,伸ばした腕を前方から上に向かって上げて,腕が真上まで上がった状態です。

この場合,健側の右肩の屈曲の可動域角度が180度であるのに対して,怪我をした左肩の屈曲の可動域角度は120度までしか上がりませんので,左肩の可動域角度は右肩の可動域角度の66%程度に制限されているということになります。そうすると,健側の可動域角度の4分の3(75%)以下に制限されているということになるので,「関節の機能に障害を残すもの」に該当することになります。

関節の機能に著しい障害を残すもの

障害の程度が次に軽いのは「関節の機能に著しい障害を残すもの」です。

「関節の機能に著しい障害を残すもの」は,最も障害の程度が軽い「関節の機能に障害を残すもの」と違って,以下のように該当するケースが2種類あります。

①関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限された場合

②人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節で,可動域角度が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されていない場合

②については,可動域の制限を条件としていませんので,人工関節や人工骨頭にした場合には,最低でも「関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当することになります。

関節の用を廃したもの

障害の程度が最も重いのが「関節の用を廃したもの」です。

「関節の用を廃したもの」に該当するケースは以下のとおり3種類あります。

①関節が強直したもの

②関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの

③人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節で,可動域角度が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている場合

①関節が強直したもの

「関節が強直したもの」というのは「関節の完全強直又はこれに近い状態にある」場合をいいます。

「関節の完全強直」というのは,関節が全く動かない状態をいいます。

「これに近い状態」というのは,関節可動域が原則として健側の関節可動域角度の10%程度以下に制限されている状態をいいます。

「10%程度」というのは,健側の関節可動域角度の10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度のことをいいます。

ここは少しわかりにくいので,先ほどの例を使って説明したいと思います。

健側の右肩の屈曲の可動域角度は180度だった場合,この10%の可動域角度は18度となります。18度は5度単位で見ると半端な数字ですので,切り上げて20度とします。

腱板断裂で左肩の屈曲の可動域角度が20度以下に制限されていたら,健側の可動域角度の10%程度以下に制限されているということになります。

つまり,18度以下ではなく,20度以下であれば,健側の可動域角度の10%程度以下に制限されていることになるということです。

もちろん,左肩の屈曲の可動域角度が10度以下に制限されていた場合には,切り上げる前の180度の10%に当たる18度も下回りますので,当然に,健側の可動域角度の10%程度以下に制限されているということになります。

また,「関節が強直したもの」に該当するためには,主要運動が複数ある関節の場合,すべての主要運動で「関節の完全強直又はこれに近い状態」にならなければなりません。

これは,最も障害の程度が軽い「関節の機能に障害を残すもの」や次に軽い「関節の機能に著しい障害を残すもの」が,主要運動のどれか1つでも条件を満たせば該当したのとは,異なる点です。

②関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの

「完全弛緩性麻痺」というのは,末梢神経損傷などによって筋緊張がなくなり関節を完全に動かせなくなった状態をいいます。

通常は,可動域角度が制限されているかどうかは,他動値を見るのですが,弛緩性麻痺によって関節が動かせない場合には,自動値をみます。

「これに近い状態」とは,先ほどの①関節が強直したもので説明したことと同じになります。

③人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち,その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている場合

先ほど,工関節・人工骨頭にした場合には,最低でも「関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当すると説明しましたが,これに加えて可動域角度が2分の1以下制限された場合には,最も重い「関節の用を廃したもの」に該当することになります。

また,人工関節・人工骨頭にした場合は,主要運動が複数あってもそのうちの1つの可動域角度が2分の1以下に制限されていれば,「関節の用を廃したもの」に該当することになります。

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