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中心性頚髄損傷の診断と後遺障害認定にはズレが多い

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中心性頚髄損傷(中心性脊髄損傷)とは

中心性頚髄損傷(中心性脊髄損傷)というのは、脊椎の急激な過伸展による脊柱管狭窄や脱臼・骨折により生じる脊髄の中央部分の損傷のことをいいます。簡単にいうと、脊髄が完全に損傷するのではなく、脊髄の中心部分だけに損傷が生じる脊髄損傷のことをいいます。

中心性頚髄損傷を負うと、当初は一過性の四肢完全麻痺の状態になりますが、時間の経過とともに、下肢の機能から回復していきます。

脊髄の完全損傷にみられるような下肢の運動知覚麻痺や膀胱排便機能障害は、時間の経過とともに改善することが多いようですが、両上肢の運動知覚麻痺は残ってしまうことが多いです。

ただし、私が以前担当した中心性頚髄損傷の事案では、時間が経っても下肢の運動知覚麻痺も膀胱排便障害の残ってしまったというケースがあったので、中心性頚髄損傷だからと言って、上肢の痺れや麻痺の症状しか残らないとは考えない方がいいように思います。

また、触覚の機能も異常をきたすことがあり、熱いものや冷たいものに触れても、熱いもしくは冷たいと感じない温痛覚障害が残ることもあります。

中心性頚髄損傷には、以上のような症状や障害が残りますが、基本的には、脊髄の完全損傷の症状よりは軽い傾向にあると思います。

脊髄損傷の後遺障害等級と障害の程度

中心性頚髄損傷を含む脊髄損傷の後遺障害等級は、麻痺の程度やどの程度介護を必要とするかによって1級から12級まで区分されます。以下の表は、麻痺の定義、後遺障害等級とそれに対応する麻痺の程度と介護の程度を表にしたものになります。

脊髄損傷による麻痺の程度

区分麻痺の程度
四肢麻痺左右の両手両足の麻痺
片麻痺左右どちらかの両手両足の麻痺
対麻痺両手もしくは両足の麻痺
単麻痺左右どちらかの手または足の麻痺

脊髄損傷の後遺障害等級

後遺障害等級認定区分麻痺の程度及び介護の程度
1級せき髄症状のため、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について常に他人の介護を要するもの①高度の四肢麻痺が認められる
②高度の対麻痺が認められるもの
③中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
④中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
2級せき髄症状のため、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について随時介護を要するもの①中等度の四肢麻痺が認められるもの
②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
③中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
3級生命維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが、せき髄症状のために労務に服することができないもの①軽度の四肢麻痺が認められるもの
②中等度の対麻痺が認められるもの
5級せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかにすることができないもの①軽度の対麻痺が認められるもの
②一下肢の高度の単麻痺が認められるもの
7級せき髄症状のため、軽易な労務以外の労務に服することができないもの一下肢の中等度の単麻痺が認められるもの
9級通常の労務に服することができるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの
12級通常の労務に服することができるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの①運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの

中心性頚髄損傷は、脊髄の部分損傷なのでそれほど高い後遺障害等級は認定されないと思われがちですが、上肢の運動知覚麻痺は残存するので対麻痺の状態になる可能性があります。そうすると、対麻痺の程度が中等度で介護を要するほどのものであれば、1級や2級が認定される可能性もあるということになります。私が担当した中心性頚髄損傷でも3級が認定された事例がありました。

中心性頚髄損傷の診断と後遺障害認定にはズレが多い

実は、交通事故の被害者は中心性頚髄損傷と診断されることが結構多くあります。追突事故など事故の態様としてはそれほど重大でない場合でも中心性頚髄損傷と診断されることがあります。

ところが、自賠責では、後遺障害診断書に中心性頚髄損傷と診断されていても、脊髄損傷の後遺障害が認定されないということが多くあります。

脊髄損傷の後遺障害の場合、画像検査で脊髄損傷を示す所見(特にMRIによる脊髄輝度変化の所見)が認められることが重要となります。

中心性頚髄損傷と診断されたのに、脊髄損傷の後遺障害が否定された事案では、すべてといっていいと思いますが、画像検査で脊髄損傷を示す所見が認めらません。ひどい後遺障害診断書になると、中心性頚髄損傷と診断しているにもかかわらず、画像所見を一切記載していないというものもあります。

なぜ、画像検査に慣れている整形外科医が画像検査で脊髄損傷を示す所見が認められないにもかかわらず、中心性頚髄損傷と診断するのかはよく分かりませんが、診断書に中心性頚髄損傷という記載があった場合でも、基本的には診断書の記載を頭から信用するということせず、画像検査で脊髄損傷を示す所見があるかを必ず確認するようにしています。

以前、画像所見がないけれども、病的反射、筋力低下、感覚麻痺などの神経学的検査で異常が認められるという事案で、何度か後遺障害の異議申立てや自賠責保険・共済紛争処理機構に調停の申請をしたことがあるのですが、すべて画像所見がないことを理由に、脊髄損傷の後遺障害は否定されました(なお、神経学的検査も他覚的所見になりますので、検査結果に異常があれば、症状を裏付ける所見になりえます。ただ、脊髄損傷の認定ではこの検査だけでは不十分です。)。

事故態様が重大な事故でなかったのに、中心性頚髄損傷と診断されている場合には、後遺障害の請求をする前に、必ず画像検査で脊髄損傷を示す所見が認められるかを確認するようにしましょう。

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