クロノス総合法律事務所 神奈川県弁護士会所属

交通事故 賠償・補償の豆知識死亡交通事故では被害者遺族が刑事裁判に参加できる

公開日:
2018.10.31
更新日:
2026.06.17
交通事故 交通死亡事故 裁判

横浜で発生した神奈中バスの交通事故

10月28日夜,横浜市西区桜木町で神奈川中央交通の路線バス(神奈中バス)が乗用車に追突し,さらにその乗用車が別の路線バスに追突するという事故が発生しました。男子高校生1名が死亡し,そのほか6人が重軽傷を負ったそうです。

運転手、直前に意識失う? 横浜の事故、高1乗客死亡

私も横浜市内の高校に通学していたときに神奈川中央交通の路線バスを利用していたので,ひとごととは思えませんでした。突然の交通事故でご子息を失ったご両親の気持ちを考えると非常に痛ましい気持ちになります。ましてや安全運転を第一とすべき公共交通機関である路線バスに乗車中の交通事故で亡くなってしまったとなるとなおさらです。

ニュースでは事故直前に神奈中バスの運転手が意識を失いバスが柱に衝突したと報道されていましたので,運転手に身体的な異常が発生した可能性が高いと思われますが,運転手は過失運転致死傷罪で逮捕されました。被害者が死亡し,けが人も複数となると逮捕は当然といえるでしょう。

刑事裁判になる可能性が高い

運転手の逮捕容疑である過失運転致死傷罪は故意の犯罪ではなく過失の犯罪であるため,一般的には不起訴処分や重くても罰金刑の処分で終わってしまうことが多いのですが,今回の事故は亡くなった高校生を含めて被害者が7名もいますので,法廷で行われる正式裁判となる可能性が高いと思われます。

以前は交通事故の刑事処分というと,被害者にも多少の過失があって発生した死亡事故であったりすると,執行猶予付きの有罪判決であったり,罰金,不起訴処分という結果になることも多くあったかと思いますが,最近では,今回のように被害者が死亡してしまったような交通事故の場合,正式裁判となり,判決も執行猶予のつかない実刑判決になることが多くなっていると思います。

最近,私が被害者側の代理人として参加した死亡交通事故の刑事裁判でも執行猶予のつかない実刑判決になりました。

おそらく,裁判所では,近年飲酒運転やあおり運転などで死亡事故が引き起こされていることに鑑みて,死傷者が出ている交通事故について厳罰にする傾向にあるのだと思います。

被害者遺族も死亡交通事故の刑事裁判に参加することができる

先ほど,私が被害者側の代理人で死亡交通事故の刑事裁判に参加したという話をしましたが,過失運転致死傷罪の場合,被害者や被害者遺族も刑事裁判に参加することができます。これを被害者参加制度(刑事訴訟法316条の33)といいます。

被害者参加制度は全ての刑事裁判で認められるものではなく,殺人罪などの故意の犯罪行為により人を死傷させた事件や今回の交通事故のように人が死傷したような重大な事件で認められる制度です。

今回の交通事故でも刑事裁判になれば,被害者や被害者のご遺族は被害者参加制度を利用して運転手の裁判に参加することができます。

被害者参加制度を利用して刑事裁判に参加すると,被害者や被害者のご遺族は以下のことを行うことができます。

①公判期日に出席すること

②検察官の権限行使に意見を述べること

③情状に関する証人の供述の証明力を争うために必要な事項について証人を尋問すること

④意見を述べるために必要と認められる場合に被告人に質問すること

⑤事実又は法律の適用について意見を述べること

⑥心情等に関する意見を述べること

なかなか被害者や被害者のご遺族が自分たちだけで法廷に立って上記のことを行うのは難しいので,代理人となる弁護士を立てて被害者参加することが多いと思います。おそらく,裁判所や検察官も被害者や被害者のご遺族と直接やり取りをするよりは,代理人となった弁護士を通じてやり取りする方がやりやすいのではないかと思います。

弁護士を立てる費用は,弁護士によって異なると思いますが,場合によっては被害者参加人のための国選弁護制度を利用して法テラスの援助を受けることが可能です。なお,当事務所では,交通事故の賠償請求のご依頼をいただいた場合には費用をいただかずに被害者参加人の代理人としての活動を行っています。

死亡交通事故において被害者参加制度を利用する意義

裁判官は,基本的には過去の同じような事故(過失の内容,死傷した被害者の数など)でどのような判決が出されていたかという点を考慮して判決を下すことが多いので,被害者参加制度を利用したからといって,劇的に判決の内容が重くなるということはありません。

しかし,裁判官は被害者や被害者遺族の処罰感情や被害感情を十分に考慮しますので,必ず被害者参加制度を利用し刑事裁判に参加して,被告人に対する処罰感情や家族を失った悲しみが続いているといった被害感情を裁判官に伝えることが重要だと思います。

また,私がこれまでに担当した被害者参加では,刑事裁判で意見を述べることで,被害者や被害者遺族の気持ちが多少でも違ったものになるということもあったように感じます。

やはり,被害者や被害者遺族が外に置かれて刑事裁判が行われるよりも,裁判の当事者として裁判に参加した方が気持ちの面で大きな違いがあるのではないかと思います。

弁護士 竹若暢彦

弁護士 竹若暢彦

クロノス総合法律事務所の代表弁護士の竹若暢彦です。当事務所は、交通事故の被害者側専門の法律事務所です。多数の交通事故の被害者側の解決実績がありますので、交通事故の被害にお悩みの方は一度ご相談ください。

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