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交通事故による高次脳機能障害の後遺障害認定と賠償金について解説

更新日:2023年11月16日

高次脳機能障害って何?

交通事故で頭部を受傷すると脳が損傷してしまうケースがあります。

脳は、人間のすべての機能をつかさどっているため、損傷すると様々な障害が残ってしまいます。

脳が損傷したときに生じる様々な障害を高次脳機能障害といいます。

高次脳機能障害は、簡単に言ってしまえば、脳機能が低下した状態をいいます。

通常、人間は、目で見たり、耳で聞いたりと五感の作用によって情報を得て、それを脳で認知して状況に応じた行動をとります。

しかし、高次脳機能障害になってしまうと、五感の作用で情報を得ることや認知することができなかったり、認知した状況に応じた行動がとれなくなってしまうということが起きます。

高次脳機能障害の代表的な症状として、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、人格変化などがあげられます。

①注意障害

注意障害とは、会話や動作が散漫になったり、思考力、判断力、集中力が低下した状態、また、それによって同時に2つのことができなくなってしまうような状態を言います。

例えば、人の話を聞いていられなかったり、続けてひとつのことをできなかったり、電話をしながらメモを取るといったことができなくなったりします。

高次脳機能障害になる前の被害者の状態を知らない人からすると、もともとそのような人だと思われてしまうようなことがあったり、そもそも注意障害が発症していること自体に気づかれないこともあるため、高次脳機能障害が見落とされやすい障害と言われる要因となる症状です。

②記憶障害

記憶障害とは、新しいことを記憶すること、記憶を保持すること、記憶を思い出すことのいずれかに障害がある状態を言います。

新しいことを記憶できない場合を前向性健忘と言ったりします。また、事故前に覚えていた記憶を思い出せない場合を逆行性健忘と言ったりします。

このような記憶障害は、高齢者の認知症の症状にもみてとれます。

そのため、高齢者の方が交通事故の被害に遭って高次脳機能障害になってしまうと、発症している記憶障害が高次脳機能障害によるものなのか、認知症によるものなのかが分からず、本当は交通事故の被害によって高次脳機能障害が発症しているにもかかわらず、後遺障害が認定されないというケースもあります。

一方で、若い方が高次脳機能障害になってしまうと、勉強で新しい知識が覚えれなくて受験で苦労したり、新しい仕事を覚えられず仕事を辞めなければならなくなったり、将来が台無しになってしまうこともあります。

③遂行機能障害

遂行機能障害とは、目的に向かって計画を立てて計画通りに実行する能力が低下した状態を言います。

目的に向かって計画を立てて計画通りに実行する能力というと、すごく高度な能力のようにも思えます。しかし、遂行機能障害とは、そこまで高度な能力が低下するというものではありません。

例えば、ある程度の年齢の方であれば、目的地に到達するために、どの道を歩いていくのか、電車はどこで乗り換えるか、どの駅で降りればいいのかということは、調べさえすれば理解して目的地に到達することができます。

しかし、高次脳機能障害になって遂行機能障害を発症してしまうと、地図を見ても途中でどの道をあるいているのかが分からなくなったり、電車の乗り換えができなくなったり、目的の駅で降りれなかったりということが起きます。

つまり、誰もができるような簡単な計画を立てて、計画通りに行動するということをできなくなってしまうのが遂行機能障害なのです。

④人格変化

人格変化とは、ちょっとしたことで怒るようになり感情のコントロールができなくなったり、事故前は普通の社会生活を送っていた成人が、事故後、人に甘えて子供っぽくなったりといった感情や人格面で変化が生じることを言います。

高次脳機能障害になって人格変化の症状が出てしまうと、周囲の人間とうまく合わせることができなかったり、自分の思い通りにならずに衝突してしまうということが起き、うまく社会生活が送れなくなってしまうこともあります。

人格変化によって周囲の人とうまくやっていけなくなってしまうと、最悪の場合、学校や仕事を辞めなければならなくなってしまったということもあるので、事故後の人生が台無しになってしまうという方もいらっしゃいます。

⑤高次脳機能障害の症状があると感じたら高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談しよう

以上のように高次脳機能障害には様々な症状がありますが、交通事故に遭って「集中力が低下した」「記憶力が悪くなった」「計画を立てるのが苦手になった」「怒りっぽくなった」などの症状があるようでしたら、高次脳機能障害の後遺障害が認定される可能性があるので、高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談しましょう。

高次脳機能障害の後遺障害等級を知ろう!

では、次に高次脳機能障害の後遺障害等級について解説します。

高次脳機能障害は、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、人格変化といった症状が出現するため、仕事や日常生活の面で大きな支障をきたします。そのため、高次脳機能障害になってしまった場合、自賠責では1級から9級、労災では1級から12級までの後遺障害等級が認定されます。以下の表は、自賠責の高次脳機能障害の認定基準や補足事項になります。

後遺障害等級認定基準補足事項
1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの
2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動ができても、生命維持に必要な身辺動作に家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの
3級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務にすることができないもの単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業維持力などに問題があるもの

自賠責では、高次脳機能障害の後遺障害等級はすべて一桁等級になりますので、高次脳機能障害が自賠責で認定された場合には、のちほど説明するように高額の賠償金になることが多いです。

高次脳機能障害の後遺障害認定には専門知識が必要

このように自賠責では高次脳機能障害の後遺障害等級が1級から9級まであり、それぞれ基準や補足的な基準が設定されています。しかし、症状がこれらの基準に該当すれば、直ちに高次脳機能障害が認定されるというものではありません。

高次脳機能障害の後遺障害が認定されるためには、脳自体に損傷を負ったことが確認される必要があります。あくまでも交通事故で脳に損傷を負ったことを原因として発症した高次脳機能障害でなければ後遺障害の認定はされないのです。一応、非器質的損傷による高次脳機能障害もありますが、自賠責ではほとんど認定さないようです。

脳損傷を確認するポイントは、①初診時の意識障害、②頭蓋内病変、脳萎縮又は脳室拡大の画像所見です。

 ①初診時の意識障害

脳に損傷を負った場合、脳の損傷の程度が重ければ重いほど意識がない状態が続きます。脳の損傷の有無や程度を判断する1つのポイントとして、初診時に意識障害(意識がない状態)がどの程度続いたのかを確認するのです。

意識障害の程度は、JCS(Japan Coma Scale)またはGCS(Glasgow Coma Scale)という判定基準によって判断します。JCSは、覚醒の段階を9段階に分類したもので、数値が大きいほど意識障害の程度は重くなります。一方、GCSは、「開眼」、「言葉による応答」、「運動による最良の応答」という3つの要素を独立して観察し、それぞれ「1点~5点」で評価して合計点を出すもので、点数が低いほど意識障害の程度は重くなります。

②頭蓋内病変、脳萎縮又は脳室拡大の画像所見

脳損傷には、脳の一部を損傷する局在性脳損傷と脳の全体を損傷するびまん性軸索損傷があります。局在性脳損傷の場合、急性期に撮影した画像で脳挫傷や脳内出血などの頭蓋内病変を確認することができます。

一方、びまん性軸索損傷の場合、急性期の画像は正常であるということが多くあるようです。そのため、最も重要なのは、事故後に定期的に撮影した画像を比較して脳室拡大や脳萎縮の所見が認められるという点です。

脳が損傷すると時間の経過とともに脳が萎縮して、脳室が拡大するので、脳萎縮や脳室拡大を画像で確認できれば、脳を損傷した可能性があります。

ただし、脳を損傷すれば、必ず脳萎縮や脳室拡大の所見が認められるということではありませんので、脳萎縮や脳室拡大の画像所見がないからといって脳損傷もなかったということにはなりません。この点は注意が必要です。

重度の高次脳機能障害の事案であれば、おそらく①も②も問題なく認められることが多いので、問題なく後遺障害認定されると思います。

しかし、軽度の高次脳機能障害の場合、意識障害があったことを見落とされていたり、脳室拡大や脳萎縮がはっきりしないときがありますので、脳損傷がなく非該当という認定がなされてしまうおそれがあります。

非該当と認定されてしまうと、脳外傷を裏付ける有力な資料を集めた上で異議申立ての手続きをしなければなりませんので、解決までに非常に時間がかかってしまいます。

1度目の認定手続きでしっかりと高次脳機能障害の後遺障害を認定してもらうためには、高次脳機能障害の後遺障害認定について詳しい弁護士に手続きを依頼することをお勧めします。

高次脳機能障害の賠償金(示談金)は1億円以上になることもある

高次脳機能障害もほかの後遺障害と同じように認定された後遺障害の等級が重いほど(1級が最も重い)、賠償金(示談金)も高額になります。高次脳機能障害の賠償金(示談金)は1億円以上になることもあります。

賠償金は、将来介護費が非常に高額になるのですが、自賠責の認定では、障害によって介護が必要な状態とは1級または2級の場合しか想定していません。高次脳機能障害で1級または2級の後遺障害が認定されれば、保険会社に対して高額な将来介護費を請求することが可能です。

自賠責では3級以下の後遺障害では介護を必要としないことを前提としていますが、高次脳機能障害の場合、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、人格変化といった症状が出現しますので、誰かが見守りや声掛けをしないと社会生活や日常生活を送ることができないというケースもあります。

誰かが見守りや声掛けをしないと社会生活や日常生活を送ることができないというケースでは、3級以下の等級でも将来介護費の請求が可能なこともあります。

しかし、高次脳機能障害で3級以下の等級の場合、保険会社は将来介護費を提示することはほとんどありません。

そのため、高次脳機能障害で3級以下の等級が認定されたが、被害者の家族などが見守りや声掛けをしなければ、被害者本人が社会生活や日常生活を送ることができないという場合には、弁護士に将来介護費の請求が可能か確認してもらった方がいいと思います。

クロノス総合事務所では、高次脳機能障害で3級以下の等級でも将来介護費の請求が可能かなど賠償金の計算について無料でアドバイスをしておりますので、ぜひご相談下さい。

将来も安心して生活できる賠償金(示談金)を獲得するには弁護士への依頼がベストの解決

高次脳機能障害が残ってしまった場合、仕事復帰できないというケースも多くありますので、将来の生活に不安を感じていると思います。

そうはいっても高次脳機能障害になってしまうと自分で保険会社と交渉はできませんし、ご家族も低額な賠償金で解決しようとする保険会社に太刀打ちできません。

これまで解説してきたように高次脳機能障害は専門知識が必要です。また、弁護士に依頼することで高額の賠償金を獲得することが可能になります。

交通事故の被害に遭って高次脳機能障害が残ってしまった場合、将来も安心して生活できる賠償金(示談金)を獲得するには弁護士に依頼することがベストの解決です。

クロノス総合法律事務所は高次脳機能障害の無料相談を実施しています

高次脳機能障害は見落とされやすい障害と言われています。また、ご家族の方でも、被害者が大変な交通事故から生きて帰ってこれたということに安心してしまい、高次脳機能障害の症状が出ていても気が付くのに時間がかかってしまうということもあります。

交通事故で頭部を受傷した場合には、高次脳機能障害になってしまう可能性があるので、少しでも事故前と違うことがあったら必ず脳神経外科の医師に相談して下さい。

交通事故で不幸にも高次脳機能障害になってしまった場合には、保険会社が示談で十分な賠償金を支払ってくることはありませんので、必ず高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談して下さい。

クロノス総合法律事務所は、高次脳機能障害に詳しい弁護士が在籍しており、多くの高次脳機能障害の事案を解決しています。

また、無料相談を実施していますので、ぜひ、クロノス総合法律事務所にご相談ください。

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