
交通事故における「過失割合」とは、交通事故の加害者と被害者、それぞれが負うべき責任の度合いを「数値」で可視化したもの。
「加害者 対 被害者」の表記で示され、「10対0」であれば加害者に100%の責任があり、「8対2」であれば被害者にも20%の過失があることを意味します。
過失割合が1割変わるだけで、受け取れる賠償金の額が数十万円・数百万円単位で変わることも珍しくありません。
本記事は保険会社から提示された過失割合に「納得いかない」と感じている被害者の方向けに、これから具体的にとるべきアクションや相談先などを解説します。
また、クロノス総合法律事務所が「無過失」を勝ち取った事例も紹介していきます。
「過失」や「過失割合」の言葉の意味について詳しく知りたい方は、こちらの記事からご覧ください。
交通事故の過失割合はどうやって決まる?
交通事故の過失割合は、当事者や保険会社の感覚で決まるものではありません。
弁護士や保険会社は「基準書」をもとにして算定しています。
最も代表的な基準書は、『別冊判例タイムズ』。2026年3月に最新版の39号が発刊されました。
基準書には、事故の類型ごとに「基本過失割合」が定められていますが、実際の過失割合はこのパターンに当てはめて機械的に決まるものではありません。
個々の事故によってさまざまな「修正要素」が加味され、交渉のベースとなる数値が算出されます。
なお、この時点では確定数値ではありません。
【基本過失割合の例】
- 信号機のない交差点で直進車と対向右折車が衝突した場合:右折車80%、直進車20%
- 停車中の車両に追突した場合:追突車両100%、停車中車両0%
【修正要素の例(被害者側・加害者側どちらにも適用され、加算・減算)】
- 無免許運転だった
- 酒気帯び運転をしていた
- 脇見運転をしていた
- (歩行者が)ふらふら歩いていた
- (自転車で)両手放し運転をしていた
- (被害者が)幼児(6歳未満)だった
たとえば基本過失割合が「7対3」の事故でも、加害者の過失を加算すべき要素があれば「9対1」などに修正される場合があります。
逆に、被害者側にも過失が認められる場合は、「5対5」などに修正され、獲得できる賠償金は減少してしまいます。
交通事故の過失割合は誰が決める?
「過失割合は警察が決めるもの」と思っている方は少なくありませんが、実は誤解。
過失割合とは、加害者と被害者の話し合い(示談交渉)によって最終的に決まるものです。
当事者間で合意できない場合は、裁判に持ち込むことになります。
警察は事故現場での実況見分や捜査記録の作成を行いますが、過失割合を決定する権限はありません。
加えて、保険会社も過失割合を決める立場にはありません。
保険会社が提示している過失割合はあくまで「主張」。
事故を起こした加害者本人が正しい主張をするとは限りませんし、警察の証拠を取り寄せて正確に算出したものとも限りません。
納得いかない場合、そのまま受け入れる必要はないのです。
不満を抱えたまま示談書にサインしてしまわないように注意しましょう。
過失割合が変わると、賠償額はどう変動する?
過失割合によってどれだけ賠償金の金額が変動するのか、被害者側が損をする場合もあるのかなど、具体的なケースを見ていきましょう。
過失割合ごとの賠償額をシミュレーション
過失割合が変わることで、被害者が実際に受け取れる賠償金の額は大きく変わります。計算式は以下の通りです。
被害者の受取額=損害の総額×(1-被害者の過失割合)-治療費などの既払金
たとえば、被害者が1,000万円の損害(うち治療費100万円で相手損保が支払い済み)を負った場合、過失割合によって受け取れる金額がどれだけ変わるかシミュレーションしてみましょう。
| 過失割合 | 被害者の過失割合 | 過失相殺後の損害額 | 受取金額 |
|---|---|---|---|
| 10対0 | 0% | 1,000万円 | 900万円 |
| 8対2 | 20% | 800万円 | 700万円 |
| 7対3 | 30% | 700万円 | 600万円 |
| 5対5 | 50% | 500万円 | 500万円 |
過失割合が「8対2」か「7対3」かの違いでも、100万円の差が生じています。
慰謝料、治療費、休業損害、後遺障害による逸失利益など、すべての損害項目に対して過失相殺が適用されるため、重傷事故ほど、損害範囲が広いほど金額差も大きくなるでしょう。
過失割合が10対0になるのはどのようなケース?
被害者の過失がゼロ(10対0)と認められる代表的なケースは以下のとおりです。
- 一方的な追突事故全般
- 赤信号無視
- センターラインオーバー
ただし、追突事故であっても「追突された被害者側」が正当な理由なく急ブレーキをかけていた場合などは、被害者に一定の過失が発生します。
「もらい事故だから絶対に過失ゼロ」と決まっているわけではありません。
加害者側からの請求で「過失相殺」される場合もあり
加害者も損害を被っていた場合、加害者側に物損がある場合、加害者側からも被害者に対して損害賠償を請求する権利があります。
人身損害については、双方の賠償金(損害賠償債務)を相殺することは法律で禁止されていますが、物損については、双方の賠償金(損害賠償債務)を相殺することが法律で禁止されていません。
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例)過失割合8対2、どちらも100万円の物損が発生した場合
①被害者がもらえる賠償額=100万円×(1-0.2)=80万円
②加害者がもらえる賠償額=100万円×(1-0.8)=20万円
→①と②を差し引きしてそれぞれがもらえる賠償額
被害者:60万円(80万円-20万円)
加害者:0円(20万円-80万円)
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上記の通り、通常は被害者の請求が加害者の請求を上回り、相殺の結果、加害者側がもらえる金額は0円となるケースが大半です。ちなみに、このような処理の方法を相殺払いと言います。
しかし、加害者が高級車に乗っていて修理代が高額なったような場合には被害者側が多額の賠償金を支払わなければならないケースも起こりえます。
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例)過失割合8対2、被害者に10万円、加害者に100万円の物損が発生した場合
①被害者がもらえる賠償額=100万円×(1-0.2)=8万円
②加害者がもらえる賠償額=100万円×(1-0.8)=20万円
→①と②を差し引きしてそれぞれがもらえる賠償額
被害者:0万円(8万円-20万円)
加害者:12万円(20万円-8万円)
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事故の相手は選べません。
自身の過失割合が低めに抑えられたとしても、こうした事情次第では予想外の出費につながることがあります。
可能な限り有利な結果を勝ち取るための手段として、弁護士への相談を検討しましょう。
保険会社の提示する過失割合は高くても低くても要注意!
保険会社から提示された過失割合が想定より高い場合は「納得いかない」と感じるかもしれませんが、想定より低すぎる場合、想定外に「過失ゼロ」だった場合でも、油断は禁物です。
ここでは、クロノス総合法律事務所が数々の保険会社との交渉で得た知見をもとに、3つの例を紹介します。
被害者側の過失割合が不当に「高い」場合
保険会社は加害者側の味方として、支払う賠償額をできるだけ抑えることをゴールに交渉に臨んできます。
なかには、実際の事故状況とは異なる説明を繰り返したり、根拠の薄い主張をし続けたりすることで交渉を長引かせ、疲弊した被害者が折れるのを待つ、いわゆる「ゴネ得」を狙う加害者も。
交渉をあきらめ、納得いかない過失割合で示談してしまう前に、弁護士に相談しましょう。
弁護士が介入することで交渉の負担を軽減しつつ、実況見分調書といった客観的証拠から主張していくことができるようになります。
被害者側の過失割合が想定より「低い」場合
意外にも、保険会社が提示する過失割合が実態より被害者に有利な場合もあります。
そもそも大量の事故案件を処理する保険会社が、1件1件コストをかけて刑事記録を入手するのは現実的ではありません。
一方、被害者側に弁護士がついた場合、弁護士は警察から刑事記録を取り寄せ、事故状況を詳細に把握することができます。
結果、情報の非対称性が生まれ、過失割合が想定より低いという現象が発生するのです。
保険会社に見落としがあるからといって、すべて正直に申告する必要はありません。
あえて「戦略的沈黙」をするのも戦い方のひとつ。
より高額な賠償金を獲得するために、有利な状況に持ち込みましょう。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
被害者側の過失割合が「0」の場合
追突事故など明らかに被害者側の過失がない事故ではないにもかかわらず、「過失割合10対0」、つまり被害者側に過失がないと提示された場合、一見ベストな条件のように感じますよね。
しかし、必ずしも「優しい保険会社・加害者」とは言えないかもしれません。
このようなケースは大抵の場合、賠償金が本来の水準より大幅に低く見積もられています。
過失ゼロでの打診は「低い金額で納得させるためのテクニック」だと捉えて、疑ってみるのが賢明でしょう。
交通事故の過失割合に納得いかない場合の対応方法
保険会社から提示された過失割合に納得いかないと感じたとき、取れる選択肢は複数あります。
順を追って確認していきましょう。
示談書にサインしない
第一に、納得いかないと感じているにもかかわらず、安易に示談書にサインしてはいけません。
示談は一度成立すると、あとからやり直すことは原則不可。
「実は納得していなかった」「相手からのプレッシャーに押し切られただけ」などと後日主張したとしても、覆すことは非常に難しいでしょう。
保険会社から「早く解決しましょう」と急かされても、焦って応じる必要はありません。
納得いかない部分があるのなら、落ち着いて反論の準備を進めましょう。
保険会社に根拠を確認する
保険会社が提示した過失割合について、その根拠の説明を求めましょう。
前述の通り、多くの場合過失割合は「基準書」から算出されていますが、どの事故類型をもとに、どの修正要素を加味したのか、実況見分調書などの客観的な証拠を取得しているのかなど、相手の主張内容を明確に把握しておくことが、反論の第一歩となります。
なお、専門的なことを踏み込んで聞くことに不安を感じる方は、このようなヒアリングの時点で弁護士へ相談・依頼して問題ありません。
弁護士に相談する
過失割合に異議を唱えたい場合、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士であれば、実況見分調書などの刑事記録を取り寄せ、事故状況を正確に把握したうえで、根拠のある反論を組み立てることができます。
保険会社が見落としていた事実が明らかになり、過失割合が大きく減少したり、無過失になったりする可能性もあるでしょう。
また、慰謝料の基準も本来支払われるべき「弁護士基準」での計算となります。
保険会社が提示している慰謝料よりも大幅な増額が期待できるでしょう。
慰謝料の基準の違いについては以下の記事も参考にしてみてください。
ADR機関に相談する
弁護士への依頼とは別に、ADR(裁判外紛争解決手続)機関を利用する方法もあります。
交通事故において代表的なADR機関は「公益財団法人 交通事故紛争処理センター」です。
ADR機関では、中立な弁護士があっせん人として被害者と加害者のあいだに入り、解決を仲介してくれます。
弁護士相談とは異なり、費用は無料。
加えて、短期間での解決が期待できる点がメリットと言えるでしょう。
弁護士とADR機関、どちらに相談すべき?
過失割合に納得いかない場合の相談先として、「弁護士」と「ADR機関」の2つが選択肢に挙がりますが、どちらが適切なのかはケースによって異なります。
それぞれの特性を整理し、メリット・デメリットを把握したうえで判断しましょう。
弁護士とADR機関の違い
| 項目 | 弁護士 | ADR機関 |
|---|---|---|
| 費用 | あり(弁護士特約があれば実質無料となる場合も) | 無料 |
| 立場 | 被害者の代理人として交渉 | 中立のあっせん人 |
| 担当者の選択 | 自分で選べる | 選べない |
| 示談できない場合 | 裁判へ移行 | 審査会へ移行 |
| 裁判・審査会での保険会社の不服申立て | 可能(控訴、上告) | 不可(審査会の決めた判断に従う) |
| 解決スピード | 比較的長期 | 比較的短期 |
| 治療中の相談 | 可能 | 不可(症状固定後から可能) |
| 後遺障害等級認定申請サポート | あり | なし |
| 相手方との連絡代行 | あり | なし |
比較すると、話し合いで示談できなかった場合の移行先だけでなく、サポート範囲などの面でも両者には明確な違いがあります。
ADR機関のひとつ、交通事故紛争処理センターについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
ADR機関に相談した方がいいケース
ADR機関が向いているのは争点が明確なケースです。
費用をかけずに早期解決できる有効な手段となるでしょう。
無料なので、費用倒れが心配な場合でも安心して相談できます。
具体的には、「賠償金の金額だけ」に争点がある事案が最適です。
過失割合や後遺障害、治療費の支払いなどについては特に争点がなく、「賠償額を任意保険基準から弁護士基準にしてほしい」といったシンプルな争いの場合、1回の話し合いですぐ解決できる可能性があります。
弁護士に相談した方がいいケース
一方、弁護士に相談したほうがいいのは以下のようなケースです。
- 過失割合や後遺障害など、賠償金以外も争点がある(シンプルな争点ではない)
- 信頼できる弁護士を自分で選びたい
- 保険会社とのやり取りを代行してもらいたい
- 証拠集めをサポートしてほしい
- 後遺障害認定申請をサポートしてほしい
- 治療中から相談を進めたい
「過失割合に納得いかない」と悩んでいるあなたには、弁護士相談を推奨します。
過失割合は保険会社・加害者側にとっても非常に重要な争点。
ADR機関での話し合いにおいても、力を入れて争ってくる可能性が高いです。
そこに、あまり優秀でない弁護士が担当になってしまうと、何度も反論、再反論が繰り返され、早期解決に至らない可能性があります。
ADR機関のひとつ、交通事故紛争処理センターの場合、通常3回程度のあっせんで70%以上の示談が成立すると言われています。
しかし、過失割合などの争点で堂々巡りを繰り返すと、解決まで1年以上かかってしまうことも。
それでは「早期解決」というせっかくのメリットが得られません。
「過失割合」という争点があるなら、弁護士に相談しましょう。
クロノス総合法律事務所で無過失を勝ち取った事例2選
実際にクロノス総合法律事務所の弁護士が介入することで、保険会社が主張していた過失割合が覆ったケースを2つ紹介します。
どちらも「被害者に過失がある」という状態からスタートし、結果的に無過失(過失ゼロ)を裁判で勝ち取った事例となります。
1.過失相殺の主張を退け無過失で約430万円を獲得した事例
【事故の概要】
加害車両がバス停に停車中のバスを追い越すためにセンターラインを越えて反対車線に進入し、反対車線を走行していた被害者の車両に衝突した事故です。
【争点と結果】
相手方保険会社は被害者にも過失があると主張し、過失相殺を求めてきました。
しかし裁判では、「交差点付近でのセンターラインオーバーはかなり危険性の高い運転で、被害者には予見できなかった」として、被害者の無過失が認定されました。
後遺障害についても、示談では「交通事故と無関係のケガだ」と保険会社は突き返していました。
しかし、裁判にてカルテなどの医療記録に基づいて詳細に主張した結果、頚椎捻挫・腰椎捻挫による症状で併合14級が認定され、最終的に約430万円の賠償を獲得する結果となりました。
2.過失割合20%→0%、提示金額の約2倍となる約1,450万円を獲得した事例
【事故の概要】
交差点手前で加害者側の車が合図を出さずに車線変更を行い、バイクを運転していた被害者が衝突を回避しようとした際に転倒した事故です。
【争点と結果】
物損においては「8対2」として決着していたこともあり、保険会社は人身損害においても「8対2」を主張。
しかし、物損と同じ過失割合が適用されるとは限りません。
当事務所が介入し、実況見分調書や車両の構造などの客観的な証拠をもとに「被害者の過失はゼロ」と詳細に主張した結果、裁判で過失割合が逆転しました。
また、後遺障害があるにもかかわらず保険会社の賠償案は非常に低額でしたが、裁判で当事務所の主張が認められ、結果的に提示額の約2倍となる約1,450万円を獲得しています。
交通事故の過失割合に納得いかないときはクロノス総合法律事務所に相談を!
交通事故の過失割合がどのくらいかで、もらえる賠償金や慰謝料は大きく変動します。
過失割合は保険会社が決めるものでも、警察が決めるものでもないため、「納得いかない」と感じているなら、ためらわずにはっきり主張しましょう。
クロノス総合法律事務所は交通事故に詳しい弁護士が揃っており、過失割合を逆転させた事例、無過失を勝ち取った事例が豊富です。
電話、メール、LINEでの無料相談も受け付けているので、入院中、治療中でもお気軽にご連絡ください。
入院中からの証拠集めが過失割合を覆す重要なカギとなる可能性もあります。
過失割合に違和感を抱いているのなら、早期のご相談をおすすめします。