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保険会社が提示する過失割合が低い!実況見分調書を取り寄せない保険会社の裏事情 | 【公式】横浜の交通事故に強い弁護士《クロノス総合法律事務所》

更新日:2026年3月2日

保険会社が提示する被害者の過失割合がこちらが想定しているよりも低いときがある

保険会社から賠償金の提示がある前に依頼を受けると,保険会社が過失割合をどのように考えているかは分からないことが多いです。

保険会社が支払いを拒否しているなどの事情があれば,保険会社が被害者の過失割合を相当大きく考えているということが分かるのですが,ほとんどの場合,被害者に多少の過失があっても,保険会社は治療費等の支払いをして,示談の時に過失相殺をするのが一般的ですので,示談交渉の前に具体的な過失割合の話をすることはあまりありません。

時々,休業損害の支払いなどで,被害者の過失分を控除して支払ってくるような保険会社もありますが,どちらかといえば,このようなケースは少ないように思います。

一方,被害者の代理人としては,被害者がどの程度過失があるのかは重要なことになりますので,事前に刑事記録を入手して,被害者にどの程度の過失が見込まれるかを確認するようにしています。

もちろん,事前に刑事記録を確認するのは,保険会社との交渉のために事前にどの程度の過失割合になるのか知っておくためですが,事前にどの程度の過失割合になるかを確認することで,被害者の方にどの程度の賠償金になるのかという見込みを説明することができるというメリットもあります。

こちらは事前に刑事記録を確認して被害者と加害者の過失割合の想定をしていますが,もちろん,賠償金を請求するときにこちらから過失割合を示して過失相殺をして請求するということはありません。

なぜならば,保険会社が提示する被害者の過失割合がこちらが想定しているよりも低いときがあるからです。

これは、被害者と保険会社の間にある「情報の非対称性(持っている情報量の差)」が大きく関係しています。

過失割合の判断には刑事記録が重要

刑事記録とは,主に交通事故の状況を記録した実況見分調書と供述調書のことです。

実況見分調書とは,警察官が事故現場で事故の当事者立ち会いのもと,事故の状況を確認して図面にしたものです。

これは,基本的には事故直後に作成されるもので,当事者の記憶が鮮明な時期に作成されるものであり,警察官という第三者が作成することから,客観的な証拠として最も重要なものと位置付けられています。

少し専門的な話をすると,実況見分調書は刑事訴訟法第321条第3項に規定される「検証調書」に準ずる書面として扱われ,裁判においても極めて高い証拠能力(事実認定の基礎となる力)を持ちます。

一方で,警察が作成する書類にはいくつかの種類があり,それぞれ証拠としての強さが異なります。

書類の種類証拠としての重要度特徴
実況見分調書◎(極めて高い)現場の状況を客観的に記録した図面や写真。過失割合の決定打となることが多い。
供述調書○(高い〜普通)当事者や目撃者の話を警察官がまとめたもの。主観が含まれるため、実況見分調書と矛盾する場合は信用性が下がることもある。
物件事故報告書△(低い)物損事故(怪我なし)の場合に作成される簡易な記録。詳細な事故状況図がないことが多い。

供述調書は,事故の状況について当事者が話した内容を警察官が録取したものです。

これも事故状況を確認するためには重要な資料ですが,基本的には,検察庁は不起訴処分とした記録について供述調書を開示しない方針をとっているのでやむを得ません。

ただし,裁判になれば,供述調書を開示する方法もあるのですが,これはまた別の機会に書きたいと思います。

とにかく,過失割合の判断には刑事記録が重要ということは認識しておきましょう。

過失割合はどうやって決まるのか?「基準」の存在

そもそも,過失割合は担当者の感覚で決まるわけではありません。実務上は,弁護士も保険会社も共通して参照する「基準書」が存在します。

最も代表的なのが『別冊判例タイムズNo.38(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)』です。

※2026年3月末に『別冊判例タイムズNo.39」が発売される予定で、今後はこちらが基準書となります。

この書籍には,あらゆる事故のパターン(類型)が図示されており,それぞれの基本過失割合が記載されています。

例えば,「信号機のない交差点での出会い頭事故」であれば,この図のパターンに該当し,基本割合は「20:80」である,といった具合にスタート地点が決まります。

そこに,「修正要素」と呼ばれる事情(スピード違反があった、ウインカーを出していなかった等)を加味して,最終的な数値(10:90や30:70など)が決まる仕組みになっています。

保険会社は刑事記録を取得していないこともある

過失割合の判断には刑事記録が重要なので,当然,保険会社も刑事記録を取得していると思うかもしれませんが,実際のところ,保険会社は全ての交通事故で刑事記録を取得しているわけではないようです。

刑事記録は,先ほど検察庁が供述調書を開示しない理由でも書きましたが,プライバシーにかかわる記録です。

そのため,保険会社とはいえ,交通事故の当事者でない者が刑事記録を簡単に入手することはできません。

そうすると,保険会社が刑事記録を入手するためには弁護士に依頼をする必要があります。
もちろん,弁護士も無料では依頼を受けませんし,刑事記録の開示を求めるにもそれなりの実費が必要になります。

つまり,1件の交通事故の刑事記録を取得するだけでも保険会社にとってはそれなりのコストが発生するということになります。

保険会社が扱っている交通事故は膨大な件数ですので,そのすべてで刑事記録を取得していたらそのコストだけでかなりの金額になってしまいます。

そのため,保険会社は事故の状況を確認しなければならない事故の時だけ刑事記録を取得しており,すべての事故で刑事記録を取得しているわけではありません。

特に,軽度な事案ではほとんどのケースで刑事記録を取得していないように思います。

知らないふりをする「戦略的沈黙」

刑事記録を取得していないと,当然,こちらは知っているが保険会社は知らないという事実が出てきます。

以前あったのは,自転車が交差点を横断中にトラックに衝突されたという事故で、衝突時の信号は自転車が青でトラックが赤だったのですが,自転車に乗っていた被害者が死亡してしまったため,トラックの運転手は「自分の信号が青だった」と主張していました。

保険会社もトラックの運転手の供述をもとに過失割合を主張してきていました。

しかし,こちらで刑事記録を取り寄せたところ,目撃者の供述調書があり,トラックの信号が赤だったことが明らかになりました。

このような決定的な証拠がある場合は、当然それを提示して過失割合を修正させます。

しかし逆に、保険会社が事実誤認をしたまま、こちらに有利な(過失が少ない)提示をしてくるケースもあります。

例えば、本来なら被害者にも「著しい過失(わき見運転など)」があり、過失が10%加算されるはずの事案で,保険会社がその事実に気づいていない場合などです。

【過失割合が変わる「修正要素」の例】

  • 著しい過失(+10%程度の修正): わき見運転、著しい前方不注視、時速15km以上30km未満の速度超過など
  • 重過失(+20%程度の修正): 居眠り運転、酒気帯び運転、無免許運転、時速30km以上の速度超過など

もし保険会社が,これらの修正要素を見落として(あるいは調査コストを省いて),基本割合のまま提示してきたとしたらどうすべきでしょうか。

わざわざ「私にはわき見運転の過失がありました」と自己申告をして、賠償金を減らす必要はありません。

相手が証拠を持たず,こちらに有利な条件を出しているなら,あえてそれを指摘せずに示談を進める。これも立派な交渉戦略の一つであり、私たちはこれを「戦略的沈黙」として有効に活用することがあります。

もちろん,相手の提示が不当に低い場合は,取得しておいた刑事記録という「客観的証拠」を突きつけ,徹底的に戦います。

この「手札(証拠)をいつ、どのように切るか」の判断こそが、弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

刑事記録(実況見分調書)を自分で入手するには

弁護士に依頼せずとも,ご自身で実況見分調書を入手することは可能です。
ただし、手続きはやや煩雑です。

大まかな流れは以下のようになります。

  1. 送致先の確認:担当した警察署の交通課に電話し、「事件がどこの検察庁に送られたか」と「送致番号」を確認します。
  2. 閲覧・謄写の申請:管轄の検察庁の記録係に連絡し、記録の閲覧・謄写(コピー)を申請します。
  3. 審査・許可:申請が許可されるまで数週間かかることもあります。不起訴事案の場合は「不起訴記録としての閲覧」となるため、理由書が必要になることがあります。
  4. 閲覧・謄写:指定された日時に検察庁へ行き、記録を確認・コピーします。

【費用の目安】

  • 閲覧手数料:1件につき150円(収入印紙)
  • 謄写費用(コピー代):1枚あたり20円〜50円程度(枚数による)

慣れていないと、「どの書類が必要なのか分からない」「申請書の書き方が難しい」といった壁にぶつかることもあります。

また、苦労して入手したとしても、その図面から「自分に有利な事実」を読み解き、保険会社を説得する論理を構築するのは専門知識が必要です。

まとめ

保険会社から過失割合の提示があったとしても,それが正しいものとは限りません。

保険会社が刑事記録を確認していない場合もありますし,担当者の知識不足や勘違いで間違った提示をしていることもあります。

こちらとしては,まず刑事記録を取得して,客観的な事故状況を把握することが重要です。その上で,保険会社の提示が妥当かどうかを判断し,もし不当であれば証拠に基づいて反論する必要があります。

逆に,保険会社の提示がこちらに有利なものであれば,あえて波風を立てずにそのまま示談するという判断もあり得ます。

いずれにしても,正しい判断をするためには,正確な情報(刑事記録)と,それを分析する専門知識が不可欠です。

保険会社の提示に少しでも疑問を感じたら,まずは交通事故に詳しい弁護士に相談し,刑事記録の確認を検討してみることをお勧めします。

解決実績

30代男性 頚椎捻挫・腰椎捻挫 併合14級 約430万円獲得(過失相殺の主張を退け無過失の認定を獲得!)

60代男性 酔って道路で寝てしまったところを車にひかれて死亡した事故 7000万円以上獲得(人身傷害保険を活用して合計7000万円以上獲得)

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